ニッポノサウルスとは
学名(属名) | Nipponosaurus |
名前の意味 | 日本のトカゲ Nippon(日本)[地名]-saurus(トカゲ)[ギリシャ語] |
分類 | 鳥盤目・鳥脚類 (ハドロサウルス科・ランベオサウルス亜科) |
全長 | 約4m |
食性 | 植物食 |
生息時期 | 白亜紀後期(約8000万年前) |
下分類・種名 | Nipponosaurus sachalinensis |
論文記載年 | 1936 |
属名の記載論文 | Nipponosaurus Sachalinensis : A New Genus and Species of Trachodont Dinosaur from Japanese Saghalien. Journal of the Faculty of Science, Hokkaido Imperial University. Ser. 4, Geology and mineralogy, 3(2), 185-220. by Nagao, Takumi 1936. |
特徴

発見された標本は全長約4mですが、2017年の骨の組織を分析した研究により、まだ成長途中の若い個体(亜成体)であることが判明しました。もし完全に成長すれば、全長7.5m以上に達したと推定されています。
頭頂部には、ランベオサウルス科に特徴的な、中が空洞のトサカがありました。詳細な系統分析の結果、ニッポノサウルスはヨーロッパ(スペイン)のブラシサウルス(Blasisaurus)などと非常に近縁であることが分かりました。
この事実は、白亜紀後期に、ランベオサウルス科の恐竜たちがアジアとヨーロッパの間を、おそらく当時は陸続きだったベーリング海峡などを通じて広く移動・分散していたことを示す、非常に重要な生物地理学的な証拠となります。

発見

出典:Nipponosaurus Sachalinensis : A New Genus and Species of Trachodont Dinosaur from Japanese Saghalien.
Journal of the Faculty of Science, Hokkaido Imperial University. Ser. 4, Geology and mineralogy, 3(2), 185-220.
by Nagao, Takumi 1936.
ニッポノサウルスが発見されたのは1934年、第二次世界大戦以前のサハリン 当時日本領(現ロシア領)の川上炭鉱施設内の病院建設現場でした。
北海道帝国大学の長尾巧教授によって、1936年論文に記載されます。日本人による初めての恐竜研究論文となったのです。
1937年、再度同じ地で調査が行われ、手足の化石を発掘しています。
しかし、その後第二次世界大戦の混乱や、樺太がソ連領となったこと、そして指導者であった長尾教授の退官などが重なり、ニッポノサウルスの貴重な標本は北海道大学の収蔵庫で長らくの間、詳細不明のまま眠り続けることになります。一時は「失われた標本」とまで言われました。
21世紀に入り、小林快次博士をはじめとする新世代の研究者たちがこの標本を「再発見」し、CTスキャンなどの最新技術を駆使して徹底的に再研究したことで、ニッポノサウルスの真の姿と、その科学的な重要性が、80年以上の時を経て再び脚光を浴びることになったのです。