モノニクス

モノニクス

Mononykus

モノニクスとは

学名(属名) Mononykus
名前の意味 ひとつの爪
monos(ひとつの)[ギリシャ語]-onyx(カギ爪)[ギリシャ語]
分類 竜盤目・獣脚類(獣脚亜目・アルヴァレスサウルス科)
全長 約1m
食性 肉食(昆虫や小型の哺乳類など)
生息時期 白亜紀後期
下分類・種名 Mononykus olecranus
論文記載年 1993
属名の記載論文 Flightless bird from the Cretaceous of Mongolia.
Nature volume 363, page 188 (13 May 1993).
by Perle Altangerel, Mark A. Norell, Luis M. Chiappe & James M. Clark. 1993.

特徴

モノニクスの全身骨格化石
全身骨格(2013年撮影)

1993年モンゴルで、前脚に大きな(長さ約7.5cm)1本の爪を持つ奇妙な化石が発見されました。

モノニクスと名付けられたこの恐竜の前脚は太く、尺骨にはオレクラノン・プロセスという突起が長く伸びていました。

モノニクスの特徴といえば、発達した1本指です。 胸骨には竜骨突起という部位があり、鳥類では翼を動かすための筋肉が付いている場所が発達していました。 「指が大きく、腕力の強い」恐竜だったことがうかがえます。
また、後脚の構造から、速く走れたとも推定されています。

1本の大きな爪の最も有力な使い道は、アリ塚や朽ち木を破壊し、中にいる昆虫(シロアリなど)を主食としていた、というものです。現在のミナミコアリクイのように、特殊な食性に高度に適応していたと考えられています。

この説を強力に裏付けるのが、近縁種シュヴウイア(Shuvuuia)の化石から明らかになった、驚異的な聴覚です。内耳の構造を分析した結果、彼らは現代のフクロウに匹敵する、極めて優れた聴覚を持っていたことが分かりました。大きな目による視覚と、この鋭い聴覚を頼りに、夜の闇の中で獲物である昆虫や小動物の位置を正確に突き止めていたのでしょう。

モノニクスのいる風景
モノニクスのいる風景
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モノニクスは羽毛恐竜として描かれることがあります。
近縁種では羽毛跡の化石が発見されており、モノニクスの属するアルヴァレスサウルス科は羽毛で覆われていた系統であることがわかっています。

モノニクスの近縁種では、1つの大きな爪の横に退化した小さな2本の爪をもつ恐竜が発見されています。
モノニクスも大きな爪の他に、化石として見つかっていない、小さな退化した爪をもっていた可能性があります。

鳥か恐竜か?:大論争と収斂進化

1993年にモノニクスが発見された際、その骨格は科学界に大きな衝撃を与えました。特に、鳥類が翼を動かすための筋肉がつく胸の「竜骨突起」を持っていたことから、記載論文では「飛べない鳥」として発表され、大きな論争を巻き起こしたのです。

しかし、その後の研究で、より原始的なアルヴァレスサウルス科の仲間が鳥類とは異なる特徴を持っていることが明らかになり、現在ではモノニクスは鳥類ではなく、「鳥類とは全く別の系統で、鳥のような特徴を独自に獲得した恐竜である」と結論付けられています。

異なる系統の生物が、似たような環境や生態に適応した結果、よく似た姿形に進化することを「収斂進化(しゅうれんしんか)」と呼びます。モノニクスは、恐竜の進化の多様性と、この収斂進化という現象を学ぶ上で、非常に重要な存在なのです。

モノニクス(Mononykus)の名前

モノニクスの前足爪化石
モノニクスの前足爪化石(2013年撮影)

モノニクスの学名は、Mononykusです。モノ"ひとつの"+ニクス"爪"の意味です。
モノニクス以外にも、爪の意味の<ニクス>の名をもつ恐竜がいます。

  • バリオニクス(Baryonyx)=重い爪
  • デイノニクス(Deinonychus)=恐ろしい鉤爪
  • スキピオニクス(Scipionyx)=スキピオ(地質学者の名前)の爪

モノニクスは当初、"Mononychus"のつづりで学名がつけられました。
ところがその名前は既に甲虫(カブトムシの仲間)に使用されていたことがわかり、"Mononykus"に改名されています。

モノニクスの切手・化石ギャラリー