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恐竜の名前と意味 属名と種名

Generic Name and the origin of Dinosaur

イントロダクション

すべての生物は、学名を与えられることで分類されます。
学名は、国際動物命名規約という世界共通の約束に従って、ラテン語を基本としてローマ字で記載されます。
とはいえ、必ずしもラテン語であるとは限らず、発見された土地や記載者の意図から現地の言葉をローマ字に記載したものもあります。

例えば、プーさんで有名な「クマ」。“クマ”は和名であって、正式な学名ではありません。クマの学名は“Ursus”といいます。

恐竜の名前 属名と種名

一番有名な恐竜は、ティラノサウルスではないでしょうか。学名をTyrannosaurus rex。属名“Tyrannosaurus(ティラノサウルス)”、種名“rex(レックス)”と表記される生物です。
恐竜に限らず、学名の分類種名は「属名+種名」と併記して記載することで表します。一般的に、属名の頭文字を大文字にします。

属とは、種を大きな枠でとらえた共通の上位分類のことです。属名のことを、英語ではGeneric Name。恐竜の例では、Tyrannosaurus(ティラノサウルス)、Stegosaurus(ステゴサウルス)、Triceratops(トリケラトプス)などが属名にあたります(学術的には、これらは種の名前ではありません)。

前節のクマにもういちど登場していただくと、「属名(Generic Name)=Ursus」の中には、「種名(Specific Name)=americanus(アメリカグマ)、arctos(ヒグマ)、maritimus(ホッキョクグマ)、thibetanus(ツキノワグマ)、spelaeus(ホラアナグマ)」が属しています。ヒグマを学術的な種名でよぶと「Ursus arctos(クマ - ヒグマ)」と記載するわけです。(理解しやすいように、(括弧内)に和名を記載しました。)
わたしたち人間、“ヒト”は和名です。ヒトの学名は“Homo(属名) sapiens(種名)”。ホモ・サピエンスと読みます。

種名Allosaurus fragilisの表記
カタカナ表記の属名アロサウルスの下に、学名-種名Allosaurus fragilisと記載されています

長い間Tyrannosaurus(ティラノサウルス)属にはrex(レックス)種の1種しか登録されていませんでしたが、2024年Tyrannosaurus mcraeensisが新種として記載されました 。。Triceratops(トリケラトプス)属には、horridus(ホリッドス)種とprorsus(プロルスス)種の2種が有効名となっています。

恐竜の図鑑などでは、属名のみで表記するものが主流となっています。博物館などのラベルには、カタカナで属名のみを記載して、ローマ字で属名+種名を併記しているところもあります。

恐竜の名前(属名Generic Name)と意味

みなさんは、恐竜の名前(属名)をどのくらい知っていますか。

  • [ティラノサウルス]、[トリケラトプス]、[ステゴサウルス]、[イグアノドン]は有名でしょう。
  • [スピノサウルス]、[アパトサウルス]、[アンキロサウルス]も、多くのひとが知っている名前だと思います。
  • [コエロフィシス]、[デイノニクス]、[オヴィラプトル]の姿を思い描けるひとは、恐竜図鑑を繰り返しよんでいるひとかも知れません。
  • [グアンロン]や[タンバティタニス]、[カウディプテリクス]を知っているひとは、かなりの恐竜好きさんでしょう。

恐竜の名前(属名)で一番使用頻度の多い言葉は、「サウルス」でしょう。「サウルス」とはどういう意味なのでしょうか。
「サウルス」とは、ギリシャのラテン語で「とかげ、爬虫類」という意味です。「ティラノサウルス」の名前は、「ティラノ=暴君(恐ろしい王)」+「サウルス=とかげ」=「暴君とかげ」の意味になります。「サウルス」は、恐竜以外の爬虫類にも使われることもあります。例えば、海生爬虫類の「ティロサウルス」や「イクチオサウルス」、「プレシオサウルス」などは、恐竜ではありませんが「サウルス」が付けられています。

「ラプトル」というのも、恐竜の属名に多い名前ですね。「オヴィラプトル」「エオラプトル」「コンコラプトル」「ミクロラプトル」「ギガラプトル」など。「ラプトル」とは「泥棒」の意味です。「オヴィラプトル」=「卵泥棒」、「エオラプトル」=「夜明けの泥棒」、「コンコラプトル」=「貝どろぼう」、「ミクロラプトル」=「小さな泥棒」となる訳です。

言葉 意味 恐竜(例)
サウルス
saurus
とかげ ティラノサウルス、アロサウルスなど
ラプトル
raptor
泥棒 エオラプトル、オヴィラプトルなど
ドン
don
イグアノドン、ヒプシロフォドンなど
ニクス
nyx
デイノニクス、バリオニクスなど
ケラトプス
ceratops
角のある顔 トリケラトプス、プロトケラトプスなど
ミムス
mimus
もどき(似たもの) スコミムス、ガリミムスなど

恐竜の名前(種名Specific Name)と意味

前節では恐竜の属名について書きました。では、恐竜の名前-種名はどのくらいご存じでしょうか。
ティラノサウルス属レックス種-「Tyrannosaurus rex」(略して、T-REX)は、多くのひとが耳にしたことがあるでしょう。T-REX以外の種名まですらすら言えるひとは少ないのではないでしょうか。

ジュラ紀の王者Allosaurus(アロサウルス)属の模式種はAllosaurus fragilis。
Allosaurusはギリシャ語で「異なったトカゲ」、fragilisはラテン語で「繊細な」という意味です。椎骨が軽量化されていることを、「壊れやすい、繊細な」という表現で学名がつけられました。2024年福井県立恐竜博物館で開催された特別展「バッドランドの恐竜たち」では、Allosaurus fragilis(標本番号:DINO2560)とAllosaurus jimmadseni(標本番号:DINO11541)の頭骨標本が比較展示されていました。

大きな植物食恐竜の代表格-竜脚類Brachiosaurus(ブラキオサウルス)の模式種はBrachiosaurus altithorax。
Brachiosaurus(ブラキオサウルス)属には3種が記載されています。
Brachiosaurus altithorax、Brachiosaurus atalaiensis、Brachiosaurus nougarediです。かつてはBrachiosaurus brancaiと記載された種もいましたが、これは近縁の別属ギラッファティタン (Giraffatitan)属に再分類されました。ブラキオサウルスの模式種はBrachiosaurus altithorax。altithoraxはラテン語で、「高い胸郭」の意味です。

恐竜研究の最初期に記載されたIguanodon(イグアノドン)の模式種はIguanodon bernissartensis。
Iguanodon(イグアノドン)には、検討が必要なものも含めて5種が属しています。
Iguanodon anglicus、Iguanodon bernissartensis、Iguanodon atherfieldensis、Iguanodon dawsoni、Iguanodon fittoniの5種。Iguanodonは「イグアナの(ような)歯」の意味。イグアノドンの模式種はIguanodon bernissartensisで、30体以上の全身骨格を産出しているベルギーの炭鉱ベルニサールに因んで種名がつけられました。

背板が特徴的な剣竜の代表-Stegosaurus(ステゴサウルス)の模式種はStegosaurus armatus。
Stegosaurus(ステゴサウルス)には3種が属しています。
模式種のStegosaurus armatusのほか、Stegosaurus mjosi、Stegosaurus homheni。ステゴサウルスにはかつてもっと多くの種が記載されていましたが、種として明確な差異が認められないことから2008年に3種に統合されました。

種名には特徴を表す形容詞のほかに、研究者や支援者、神話や映画に登場する生物、発掘された土地の地名やその土地の所有者などに由来してつけられるものが多いようです。映画化された小説「ハリー・ポッター」シリーズのホグワーツ魔法学校や、発掘にはまったく関係していない詩人の名前に由来した種名まであります。