デイノニクス
図鑑 / 恐竜のしっぽ
デイノニクスとは
学名(属名) | Deinonychus |
名前の意味 | 恐ろしい爪 deinos(恐ろしい)[ギリシャ語]-onyx(カギ爪)[ギリシャ語] |
分類 | 竜盤目・獣脚類(獣脚亜目・テタヌラ類) |
全長 | 約2.5 - 4m |
食性 | 肉食 |
生息時期 | 白亜紀前期(約1億1500万年-1億800万年前) |
下分類・種名 | Deinonychus antirrhopus |
論文記載年 | 1969 |
属名の記載論文 | Osteology of Deinonychus antirrhopus, an unusual theropod from the Lower Cretaceous of Montana. Peabody Museum of Natural History YALE University Bulletin. 30. by John H. Ostrom. 1969. |
特徴
デイノニクスを有名にしたのは、"恐竜温血説"を展開するきっかけになったことです。
デイノニクスの発見が、それまでの恐竜への考えを変えました。
脳の大きさや骨格の仕組み等から活発に動き廻ったと考えられたのです。
大型植物食恐竜の化石に混じって、多くの個体化石が同時に発見されることから、「集団で行動して 群れで俊敏に行動し獲物となる大型植物食恐竜を襲っていた」と推測されています。
第2指の爪は、獲物を捕らえる際の武器
後足第2指の大きな爪(長さが15cmくらい)は前後の動く範囲が広く、歩行時には地面に付けないよう上げていました。 歩行を助けるための指ではなく、獲物を捕らえる際の武器でした。近年では、トドメを刺す武器ではなく、抑えつけるための武器だったと考えられています。
ある個体の尾椎の一部からは別の個体のデイノニクス左手第三指の爪が埋もれた形で見つかっており、 2007年の研究論文ではデイノニクス同士が争った(あるいは共食いの)可能性を示唆しています。
恐竜温血説の始まり
デイノニクスを有名にしているのは、"恐竜温血説"を展開するきっかけになったことです。
1964年に発見されたデイノニクスは、脳の大きさや骨格の仕組み等から活発に動き廻ったと考えられました。
デイノニクスの記載者だった古生物学者 ジョン・オストロム(John Ostrom)は、
「体長2.5 - 4m、体重50-100kgの動物が活発に動き回るには、現生の爬虫類のような外温性・変温動物では不可能だ」と考えたのです。
これが"恐竜温血説"のきっかけとなりました。
長い間、恐竜の温血・恒温性を示す物理的な証拠が出てきませんでしたが、最近では「羽毛を持つ恐竜」の発見や 鳥類との類似性を指摘する研究成果が相次いでおり 「一部の恐竜は温血・恒温性であったこと」は通説となっています。
最近では、デイノニクスの復元図でも羽毛が描かれることがあります。
発見と論文記載
デイノニクスの化石は、アメリカのモンタナ州・ワイオミング州にまたがるCloverly Formationとオクラハマ州Antlers Formationから産出しています。
デイノニクスの左足のかぎ爪スケッチ(標本番号YPM5205) 記載論文抜粋(1969年)
出典:Osteology of Deinonychus antirrhopus, an unusual theropod from the Lower Cretaceous of Montana.
Peabody Museum of Natural History YALE University Bulletin. 30.
by John H. Ostrom. 1969.
1931年、古生物学者バーナム・ブラウン(Barnum Brown)によってモンタナ州で発見されたのが、最初のデイノニクスの標本でした。 しかしバーナム・ブラウンは非公式ながら、この標本をDaptosaurusと呼びます (このときバーナム・ブラウンの興味は同地で調査していた鳥脚類恐竜テノントサウルス(Tenontosaurus)にありました)。
1964年になって、古生物学者ジョン・オストロム(John Ostrom)がイェール大学の発掘調査に加わり、3体分の小型肉食恐竜の断片的な化石を発見します。 それらの標本(標本番号YPM 5205など)に基づいて、1969年新属デイノニクス(Deinonychus)を記載します。 そのあとジョン・オストロムは、1931年にバーナム・ブラウンが発掘していたDaptosaurusを詳細に分析して同じ種であることが判明し、デイノニクスに分類し直しました。
1974年、ハーバード大学の調査隊によって、保存状態の良いデイノニクスの標本(標本番号MCZ 4371)が発掘されました。 ジョン・オストロムはこの標本をみて、復元図を書き直しています。