ガストニアとは
| 学名(属名) | Gastonia |
| 名前の意味 |
ガストン(人名)のとかげ
Gaston(ガストン)[人名]-ia[ラテン語接尾語] |
| 分類 |
鳥盤目・装盾類 (曲竜類)
※分類には議論があり、ノドサウルス科やアンキロサウルス科の基盤的メンバーなどとされることがあります。 |
| 全長 | 約4.5〜6m |
| 食性 | 植物食 |
| 生息時期 | 白亜紀前期 (約1億3900万年前から1億2577万年前) |
| 下分類・種名 |
Gastonia burgei (模式種)
Gastonia lorriemcwhinneyae |
| 論文記載年 | 1998年 |
| 属名の記載論文 |
A polacanthine ankylosaur (Ornithischia: Dinosauria) from the Early Cretaceous (Barremian) of eastern Utah.
New Mexico Museum of Natural History and Science Bulletin 14. by James Kirkland. 1998. |
特徴:歩く要塞と独自の武装
ガストニアは、中生代白亜紀前期(約1億3900万年前から1億2577万年前)の北アメリカ大陸に生息していた、重装甲の曲竜類(よろい竜)です。全長約4.5〜6m、体重は約1.9トンに達したと推定されています。幅広で平らな胴体と、太く強力な短い四肢を持っていました。
全身は鎧のように進化した骨質の皮膚(皮骨板)でびっしりと覆われていました。首にも装甲があり、肩や胴体の側面には、後方に反り返った大きく平らな三角形のトゲ(スパイク)が並んでいました。
腰の上部は、複数の骨板が完全に癒合した一枚岩のような巨大な盾で覆われており、防御していました。
近年の研究から、ガストニアのトゲの表面には、現生のウシの角のように「ケラチン」でできた鞘が被さっていたことが確実視されています。これにより、実際のトゲは化石として残っている骨のサイズよりも25%以上長かったと考えられています。
トゲの役割 : 対捕食者防御と同種間闘争
ガストニアが生息していた環境には、強力な鉤爪を持つ頂点捕食者ユタラプトルがいました。ガストニアは、首や背中、腰の強固な装甲を発達させ、捕食者が飛び乗るのを防ぐ「受動的」な防御を行っていました。
さらに「能動的」な防御として、尻尾を激しく鞭のように振ることで、尾の側面に並ぶ鋭い三角形のトゲを使い、敵に深い切り傷を負わせる致命的な反撃を行っていたと考えられています(アンキロサウルスのような「尾槌」はありません)。
また、ガストニアのトゲや装甲は、捕食者から身を守るだけでなく、仲間同士のコミュニケーションにも使われていたようです。背中から突き出た巨大なトゲは、ライバルへの視覚的なアピール(誇示)になり、さらにオス同士で頭をぶつけ合う「頭突き」で優劣を決めていた可能性も指摘されています。頭骨の構造が、頭突きの衝撃を吸収するクッションの役割を果たしていたという証拠も見つかっています。
生態:食性と社会性
ガストニアは低い位置に生える植物を食べる植物食恐竜でした。口先には歯のない「くちばし」があり、上あごには15〜16本の小さな歯が直線的に並んでいました。この構造から、植物を細かくすりつぶすのではなく、効率的に「切り取る」ようにして食べていたと考えられています。
興味深いことに、近年の歯の微細な傷(マイクロウェア)の分析から、幼体と成体で好んで食べる植物が違っていた可能性が指摘されています。体の小さな幼体は果実や柔らかい新芽などの栄養価の高い部分を食べ、巨大な腸で発酵させることができる成体は、シダ類など繊維質の多い植物を食べていたようです。
かつて、曲竜類はその重い装甲と動きの遅さから「生涯の大部分を単独で生活する動物」だと考えられていました。しかし、ガストニアの化石は一つの発掘現場から多数の個体が密集して発見されることが多く、これは彼らが群れを作って生活していたことを強く示唆しています。
発見と論文記載
出典:A polacanthine ankylosaur (Ornithischia: Dinosauria) from the Early Cretaceous (Barremian) of eastern Utah. New Mexico Museum of Natural History and Science Bulletin 14. by James Kirkland. 1998.
1989年、アメリカ・ユタ州のグランド郡(シーダーマウンテン層)で、古生物アーティストのロバート・ガストンによって新たな曲竜類の化石が発見されました。この化石は同時代に生息していた肉食恐竜であるユタラプトルと同じ採石場から発掘されています。
その後、1998年にアメリカの古生物学者ジェームズ・カークランドによって、新属新種「ガストニア・ブルゲイ(Gastonia burgei)」として記載されました。"ガストニア"という属名は、発見者であるロバート・ガストンに敬意を表してつけられたものです。
2016年には、同じシーダーマウンテン層の少し異なる地層から発見された、2番目の種となるガストニア・ロリーマクウィニーアエ (Gastonia lorriemcwhinneyae)も記載されています。
ガストニアは、ノドサウルス科のような体つきでありながら、アンキロサウルス科のような下を向いた頭部を持つなど、両方の特徴を併せ持つ「モザイク進化」の様相を見せています。そのため、現在でもその正確な分類(どのグループの仲間か)については研究者の間で議論が続いています。
ガストニアの切手・化石ギャラリー