アンキロサウルス

アンキロサウルス

Ankylosaurus

アンキロサウルスとは

学名(属名) Ankylosaurus
名前の意味 ゆ合したトカゲ
ankylōsis(癒合)[ギリシャ語]-saurus(トカゲ)[ギリシャ語]
分類 鳥盤目・装盾亜目・アンキロサウルス科
全長 約6-8m
食性 植物食
生息時期 白亜紀後期(約6800万年-6600万年前)
下分類・種名 Ankylosaurus magniventris
論文記載年 1908
属名の記載論文 Brown, B.; Kaisen, P. C. (1908). The Ankylosauridae, a new family of armored dinosaurs from the Upper Cretaceous. Bulletin of the AMNH, 24.

有名なのに謎多き「生きた要塞」

アンキロサウルスは、鎧竜の代名詞ともいえる、白亜紀の終わりを飾る最も有名な恐竜の一つです。その名は「癒合したトカゲ」を意味し、全身を覆う重厚な装甲に由来します。

アンキロサウルスの頭骨化石
頭骨化石(2009年撮影)

しかし、その知名度とは裏腹に、意外なことに全身が揃った完璧な骨格はまだ発見されていません。私たちが知るアンキロサウルスの姿は、頭骨や装甲、尾のハンマーといった断片的な化石と、より化石記録が豊富な近縁種(エウオプロケファルスなど)を参考にして復元されたものです。

アンキロサウルスは、低い位置にあるシダなどの柔らかい植物を食べていたと考えられています。歯は小さく貧弱だったため、硬い植物を噛み砕くことはできず、幅広いくちばしで刈り取った植物を丸呑みに近い形で食べていたようです。2017年の研究によると、1日に約60kgのシダ植物が必要だったと推定されています。

アンキロサウルスの防御は徹底しており、背中や頭を覆う大小様々な骨質の板(皮骨)だけでなく、なんとまぶたの上にもシャッターのような骨の装甲がありました。これにより、弱点である目を守ることができたのです。

さらに頭骨をCTスキャンした結果、鼻の内部が非常に複雑に入り組んでいることが判明しました。この構造は、吸い込んだ空気を温めたり湿らせたりする「エアコン」のような役割や、大きな鳴き声を出すための「共鳴室」として機能したのではないか、という興味深い説が提唱されています。

ティラノサウルスを砕く尾のハンマー

アンキロサウルスの尾化石
アンキロサウルスの尾化石(2013年撮影)

アンキロサウルスの最大の武器は、尾の先端にある巨大な骨の塊、通称「テールクラブ」です。このハンマーは、大きな2つの骨芽細胞と中央の小さな骨芽細胞から形成され、それぞれが半円形をしていました。尾の後半部の骨は互いに癒合して硬い棒のようになり、ハンマーを振るうための「持ち手」の役割を果たしていました。一方で、尾の付け根の筋肉は非常に柔軟で、これによりハンマーを強力なスピードで左右に振り回すことが可能でした。

2009年の研究によると、このハンマーの一撃は最大で364~718MPa(メガパスカル)に達したと推定されています。これは圧力洗浄機の水圧の約50倍にも相当し、同時代に生息していたティラノサウルスの脚の骨をも粉砕するのに十分な破壊力でした。まさに究極の防御兵器と言えるでしょう。

論文記載と尾先のハンマーの記述

アンキロサウルスの復元骨格図(1908)
アンキロサウルスの復元骨格図(1908年)
記載当初、尾先のハンマーは再現されていませんでした。
出典:Brown, B.; Kaisen, P. C. (1908). The Ankylosauridae...

1906年、古生物学者バーナム・ブラウン(Brown, Barnum)率いるアメリカ自然史博物館の調査隊が、アメリカ・モンタナ州ヘルクリーク層(Hell Creek Formation)で、頭骨上部や歯、背中、尾骨、肋骨などの化石標本を発見します。標本番号AMNH 5895でカタログされた化石群に基づいて、1908年新属新種としてアンキロサウルス( Ankylosaurus magniventris)が記載されます。
この論文では、アンキロサウルスの特徴である尾先のハンマー(Tail Club)は復元されていませんでした。当時はまだ、尾先部は不明だったのです。

1910年、バーナム・ブラウンはカナダ・アルバータ州のScollard Formationで肋骨、四肢、よろい、尾先の塊(Tail Club)を発見します。標本番号AMNH 5214で呼ばれるこれらの標本に基づいて、初めて尾先のハンマー(骨質の塊)が記載されます。
1947年には化石収集家のステイン・ステンバーグ(Charles M. Sternberg)が、1910年にバーナム・ブラウンが発見した土地の1km北でアンキロサウルスの頭骨化石(標本番号 CMN8880)を発掘しました(アンキロサウルスとして有名な標本です)。

映画「ゴジラ」シリーズ-"アンギラス"

アンキロサウルスは、映画「ゴジラ」シリーズに登場する"アンギラス"のモデルにもなっています。映画の中の設定では、アンギラスは水爆実験によって巨大化し蘇ったアンキロサウルスという設定になっています。1955年の映画『ゴジラの逆襲』で登場し、「ゴジラがスクリーン上で初めて対決した怪獣」として、シリーズの歴史において特別な存在です。最初はゴジラの敵として登場しましたが、後の昭和シリーズではゴジラの頼もしい「相棒・盟友」として再登場し、共に地球の平和のために戦うキャラクターへと変化していった点も、ファンにとっては重要です。
アンキロサウルスは体長6-8mほどでしたが、ゴジラシリーズで初めて登場したアンギラスは体長100mに達していました。

アンキロサウルスの切手・化石ギャラリー