サイカニア

サイカニア

Saichania

サイカニアとは

学名(属名) Saichania
名前の意味 美しいもの
Sayiqan(美しい)[モンゴル語]-ia[ラテン語接尾語]
分類 鳥盤目・装盾類 (装盾亜目・曲竜下目・アンキロサウルス科)
全長 約5m
食性 植物食
生息時期 白亜紀後期(約7200万年-7000万年前)
下分類・種名 Saichania chulsanensis
論文記載年 1977
記載論文 Ankylosauridae (Dinosauria) from Mongolia.
Palaeontologia Polonica. 37.
by Maryanska, T. 1977.

特徴:砂漠のスペシャリスト

サイカニアは、ゴビ砂漠のような乾燥した過酷な環境を生き抜くために、驚くべき適応能力を発達させていました。

天然の高性能エアコン

サイカニアの全身骨格化石
全身骨格化石(2013年撮影)

その秘密は、非常に複雑に曲がりくねった鼻腔(鼻の空気の通り道)にあります。この構造は、天然の高性能なエアコンのように機能したと考えられています。

  • 吸い込んだ乾燥した空気に湿度を与え、肺を守る。
  • 吐き出す息から水分を回収し、体内の水分喪失を最小限に抑える。
  • 体内の余分な塩分を排出するための「塩類腺」を備えていた可能性もある。
サイカニアの切手

硬い植物も食べるための口

サイカニアの口の天井(口蓋)は、他の多くのヨロイ竜と異なり、二次的に骨で補強されていました。この頑丈な口蓋によって、砂漠の硬く繊維質な植物を、強力な舌で口の奥に押し付けて食べることができたと考えられています。

サイカニアのイラスト
サイカニアのイラスト

発見と論文記載

サイカニアの頭骨スケッチ(記載論文1977年)
サイカニアの頭骨スケッチ(標本番号GI SPS 100/151)-記載論文抜粋(1977年)
出典:Ankylosauridae (Dinosauria) from Mongolia. Palaeontologia Polonica. 37. by Maryanska, T. 1977.

1970-1971年にポーランドとモンゴルのゴビ砂漠調査隊がヨロイ竜(曲竜類)の化石を発見しました。1977年ポーランドの古生物学者テレサ・マリアンスカ(TeresaMaryanska)によって、新属サイカニア(Saichania)が記載されました。属名の意味は、"美しいもの"。ホロタイプ標本の保存状態の良さを表したものでした。ホロタイプ標本は標本番号GI SPS 100/151でカタログ化され、頭骨や17の脊椎、左肩や前肢などが関節がつながった状態で発掘されています。

サイカニアは、モンゴル・ゴビ砂漠のBarun Goyot Formation(約7200万年-7100万年前の地層)とNemegt Formation(約7000万年前の地層)から発掘されています。

また、2011年には亜成体(子ども)の発見が報じられましたが、その後の調査でピナコサウルスのものであることが判明しました。

美しい化石の「秘密」:合成された骨格

サイカニア 全身骨格化石
全身骨格化石(2014年撮影)
※体の後半は別種の恐竜を元にした復元

サイカニアは「美しい」という名が示す通り、非常によく保存された頭骨と体の前半部が見つかっています。しかし、私たちが博物館などで目にする有名なサイカニアの全身骨格には、実は大きな秘密があります。

2014年のヴィクトリア・アーバー博士らによる再研究の結果、これらの全身骨格は、発見されていたサイカニアの頭と前半部に、別の種類のヨロイ竜(おそらくタルキア (Tarchia))の体の後半部を組み合わせて復元された「合成骨格」であることが明らかになりました。

つまり、サイカニアの腰から後ろ、特に後ろあしや尾のハンマー(テールクラブ)の正確な形は、実はまだ分かっていないのです。これは、一体の完璧な骨格を見つけることがいかに難しく、古生物学者が断片的な証拠からいかに全体の姿を復元しようと努力してきたかを示す、興味深いお話です。

サイカニアの切手・化石ギャラリー