恐竜の皮膚 ヘッダー画像

恐竜の皮膚

The skin of the dinosaurs

ウロコと羽毛

恐竜の皮膚の印象(跡)化石も多く発見されており、そのタイプは大きく2つに分けられます。

鳥脚類-ハドロサウルス類の皮膚の化石
鳥脚類-ハドロサウルス類の皮膚の化石

ひとつは、ウロコで覆われているタイプです。ヘビや魚のように重なり合うウロコではなく、現生のオオトカゲのような大小さまざまの隆起がある粒状の皮膚でした。

「ウロコ肌」といっても、すべての恐竜が同じだったわけではありません。白亜紀後期の肉食恐竜カルノタウルスは、全身の皮膚の印象化石が見つかっており、非常に特徴的な皮膚をしていたことが分かっています。
その皮膚は、直径5mmほどの小さな丸いウロコがモザイクのようにびっしりと並んだ地肌の上に、直径4~5cmの円錐形をした大きなウロコ(皮骨:ひこつ)が、不規則に点在しているという、ユニークな構造でした。この大きなウロコは、特に背中や体の側面に多く、体を守る鎧や、仲間へのディスプレイの役割を担っていた可能性があります。

獣脚類-ミクロラプトル・グイの化石
獣脚類-ミクロラプトル・グイの化石

もうひとつは、羽毛をもつ皮膚で覆われているタイプです。多くは中国の白亜紀の地層から見つかっています。羽毛の痕跡がある恐竜は小型〜中型の獣脚類がほとんどですが、角竜プシッタコサウルスの尾にも羽毛状の突起が見つかっており、恐竜の幅広いグループで羽毛(あるいはその原型)を持っていた可能性が考えられています。

ティラノサウルスの皮膚はウロコ状

長年、羽毛があったのか、それともウロコだったのか議論が続いていたティラノサウルスですが、2017年の研究報告が大きな手がかりとなりました。

ティラノサウルスやその近縁種( タルボサウルスなど)の皮膚の化石を分析した結果、首や腰、尻尾の部分から、鳥の羽毛ではなく、爬虫類のような細かいウロコの痕跡が発見されたのです。これにより、少なくとも成体のティラノサウルスの体の広範囲が、羽毛ではなくウロコ状の皮膚を持っていたことが確実視されるようになりました。

皮膚の色や模様の科学的な推定

かつて恐竜の色や模様は想像で描くしかありませんでしたが、近年、科学技術の進歩によって、その一端が明らかになってきました。鍵となるのは、化石に微小なレベルで保存されたメラノソームという色素を含む細胞小器官です。

シノサウロプテリクス
シノサウロプテリクスの化石
羽毛の色素が分析されました

メラノソームはその形状によって色が異なり(例:球形なら赤茶色、細長い形なら黒色)、その分布を電子顕微鏡で分析することで、生前の色を推定できます。

この手法により、シノサウロプテリクスは背中から尾にかけて赤みを帯びたオレンジ色の羽毛を持ち、尻尾には縞模様があったことが明らかになりました。

また、角竜プシッタコサウルスや鎧竜ボレアロペルタでは、背中側が濃く、腹側が薄い「カウンターシェーディング」という保護色(カモフラージュ)を持っていたことも突き止められています。

もちろん、多くの恐竜の色はまだ分かっていませんが、解析技術の進歩と奇跡的に保存状態の良い化石の発見によって、恐竜たちの世界の色彩が少しずつ明らかになってきています。