シノサウロプテリクスとは
学名(属名) | Sinosauropteryx |
名前の意味 | 中華竜鳥(中国の羽毛を持つトカゲのような鳥) Sino(中国の)[国名]-sauros(トカゲ)[ギリシャ語]-pteryx(翼、羽)[ギリシャ語] |
分類 | 竜盤目・獣脚類(獣脚亜目・コンプソグナトゥス科) |
全長 | 約1m |
食性 | 肉食 |
生息時期 | 白亜紀前期 |
下分類・種名 | Sinosauropteryx prima |
論文記載年 | 1996 |
記載論文 | On discovery of the earliest bird fossil in China (Sinosauropteryx gen. nov.) and the origin of birds. Chinese Geology. Beijing: Chinese Geological Museum. 10. by Ji Qiang, Ji, S. 1996. |
特徴
シノサウロプテリクスは、「羽毛の痕跡を残した状態で発見された、初めての恐竜」として、1996年に公表されました。
中国 遼寧省で発見されたこの化石は、「恐竜のひとグループが、鳥へと進化した有力な証拠のひとつ」として有名です。

くっきりと羽毛の跡が残されています。
シノサウロプテリクスの羽毛は「飛ぶための羽」ではありませんでした。
羽毛を身につけた初期の目的は「体温の保持」だと考えられています。
身体のバランスをとるための長い尾も特徴的です。
小さな鋭い歯をもち、小動物や昆虫を捕食していたと考えられています。
その食性は、胃の内容物が残った「最後の晩餐」の化石によって、より具体的に証明されています。ある標本のお腹の中からは小型哺乳類(Zhangheotherium)の下顎が、別の標本からは丸呑みにされたトカゲが見つかっています。
さらに、あるメスの標本では、体内に2つの卵(未産卵)が残っていました。これは、シノサウロプテリクスが鳥類のように一度に一つずつではなく、ワニのように二つの卵巣から同時に排卵していたことを示す、繁殖に関する非常に貴重な証拠です。

羽毛痕跡の論争

シノサウロプテリクスは「羽毛の跡を残した恐竜化石」として1996年に公表されましたが、2007年南アフリカの研究チームから反証の論文が提示されました。
「標本を調べたところ、羽毛のように見える繊維質の痕跡は、羽毛ではなくコラーゲン繊維の跡である」との見解が公表されたのです。

最新の研究では、羽毛と思われた痕跡部分にメラノゾームという細胞内小器官が詰まっており、これは現生鳥類の羽毛には含まれるがコラーゲン繊維には含まれないことから、やはり「羽毛の跡」とする説が有力となっています。
また、シノサウロプテリクスの発見以降「羽毛恐竜」の存在は多く知られるようになり、また、酸素を効率よく取り入れる気嚢などの類似性からも「恐竜が鳥の祖先である」説は有力な地位を築いています。
羽毛色の特定:盗賊マスクとカモフラージュ
シノサウロプテリクスは、科学的に体色が復元された最初の恐竜としても有名です。2010年の研究で、羽毛の痕跡に残された色素細胞(メラノソーム)の分析から、尾が赤褐色と白色(または薄いオレンジ色)の縞模様であったことが示唆されました。
さらに2017年、ブリストル大学の研究チームが、この研究をさらに発展させ、驚くほど詳細な体色パターンを明らかにしました。
- カウンターシェーディング:背中側が濃い色で、腹側にかけて色が薄くなる「カウンターシェーディング」と呼ばれる配色パターンを持っていました。これは、現代の多くの動物にも見られる、光による影を打ち消して立体感をなくし、敵から見つかりにくくするためのカモフラージュです。
- 盗賊のマスク模様:目の周りには、アライグマやタヌキのように、暗い色の羽毛による「盗賊のマスク」のような模様があったことが分かりました。これも、日差しを和らげたり、輪郭をぼかしたりする効果があったと考えられます。
これらの発見は、シノサウロプテリクスが、森林のような開けた場所と影が混在する環境で、捕食者から身を隠しながら生活していたことを、科学的に示しています。
シノサウロプテリクスの切手・化石ギャラリー


