恐竜のしっぽ

ティラノサウルス

Tyrannosaurus
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ティラノサウルスとは

学名(属名) Tyrannosaurus
名前の意味 暴君トカゲ
tyrannos(暴君)[ギリシャ語]-saurus(トカゲ)[ギリシャ語]
分類 竜盤目・獣脚類(獣脚亜目・テタヌラ下目)
全長 約13m
食性 肉食
生息時期 白亜紀末期(約6850万年 - 6600万年前)
下分類・種名 Tyrannosaurus rex
論文記載年 1905
記載論文 Tyrannosaurus and other Cretaceous carnivorous dinosaurs.
Bulletin of the AMNH ; article 14.
by Osborn,1905.

特徴

ティラノサウルスは大型肉食恐竜の代名詞と言ってもよいほど、最も有名な恐竜のひとつです。白亜紀末期(約6850万年前-6600万年前)に生息していました。 全長約13m、体重約4,500 – 8,000kgと推定されています。

全身骨格化石(2015年撮影)

ティラノサウルス属には、今のところ「レックス」一種しか見つかっていません。そのため、属名と種名を合わせた呼び方「ティラノサウルス-レックス(Tyrannosaurus-rex)」、「T-REX」の名称が定着しています。

強靱な顎と鋭く大きな歯をもつティラノサウルスは、獲物となった動物の骨までかみ砕いたと考えられています。噛む力は数トンにも及びます。 歯は大きなもので30cmになります。歯のふちにはセレーション(鋸歯状)と呼ばれるステーキナイフのようなギザギザが付いていて、肉を引き裂きやすい構造になっていました。

ティラノサウルスの前足(腕)(2016年撮影)

手(前肢)は極端に短く、指は2本でした。
群馬県立自然史博物館で開催された「超肉食恐竜T.Rex展」(2016年)では、「片方の手で200kgほどを持ち上げる力があり、休息時などしゃがんだ状態から立ち上がる支えの役割を果たした可能性がある」と紹介しています。 また、2017年には「噛みついた後、獲物を深く切り裂く役目を負っていた」ことを示唆する論文が発表されました(ただし、この説には多くの学者が反対の意見を唱えています)。
他の恐竜に比べて、ティラノサウルスの両目は前面に向いています。立体的にものを見ることができる(獲物との距離や速度を正確に把握できる)ため、動く動物を捕らえるのに適していました。

ティラノサウルスの近縁種から羽毛の痕跡が発見されたことから、ティラノサウルス自身にも羽毛があった可能性が取り沙汰されるようになりました。

ティラノサウルスの寿命と成長

ティラノサウルス・スーの全身骨格化石(2005年撮影)
愛称"スー"で呼ばれる個体は28歳で亡くなったことが明らかになっています

恐竜の年齢は、見つかった化石-断面の成長線を調べることで推定されます。 ティラノサウルスの寿命はおよそ30歳と推定されています。

しかし、卵から孵ったときには全長60cm、体重2kg。2歳になるころには、60%の個体が死亡しています。

ティラノサウルスの成長速度についての論文抜粋(2004年)
出典: "Gigantism and comparative life-history parameters of tyrannosaurid dinosaurs.", 2004.
by Erickson, Gregory M.; Makovicky, Peter J.; Currie, Philip J.; Norell, Mark A.; Yerby, Scott A.; Brochu, Christopher A. Nature.

また、2004年にはアメリカの研究チームが7体の標本を調べ、「成長期は14-18歳で、この間には1日あたり2.1kg、4年で3000kgの成長をしていた」と結論づけました。

化石に残った跡から、「多くのティラノサウルスは30歳に近づくと、ケガをしていたり、関節の病気にかかっていたこと」が分かっています。

共食い

ティラノサウルス(ワイレックス)の切れた尾(2017年撮影)

2002年に発見されたティラノサウルス(愛称ワイレックス(Wyrex))の尾は噛み砕かれたように切断され、さらに、切断面に感染症の跡が確認されました。
切断されたところに感染症の跡が残っていることは、ワイレックスが生きている間に尾を噛み砕かれた可能性を示唆しています。 白亜紀後期に成長したティラノサウルスの尾を噛み砕くことのできる存在-やはり、ティラノサウルスによるものだと推測されています。

2010年には、噛み跡が4箇所残るティラノサウルスの脚化石が発見されています。 ただし、こちらは生きている間につけられた傷なのか、死後に仲間に食べられた跡なのかは分かっていません。

羽毛についての論争

「ティラノサウルスに羽毛はあったのか。」

この論争に結論は出ていません。

ティラノサウルスと近縁の小型獣脚類ディロング等から羽毛の跡が見つかっていることから、 「体温調節の難しい小さな頃(幼体)には羽毛が生えていたのでは」 と考える説があります。 「身体が小さいときは体積に対する表面積が大きく体温を保つために羽毛に覆われているが、成長して身体が大きくなると体積に対する表面積が小さくなって熱を逃がすために羽毛はなくなった」と考えられたのです(コップのお湯は冷めやすいが、お風呂のお湯は冷めにくいのと同じ原理です)。

2012年ティラノサウルスの近縁とされる8m級の大型獣脚類が記載され、この標本から羽毛の跡が見つかりました。ユウティラヌスです。 そのため成長したティラノサウルスにも羽毛があったと考える学者もいますが、2017年にはウロコで覆われていたとする論文も提出されています。 まだまだ、羽毛があったのか否かの論争は続きそうです。

生息密度と個体数

2021年、ティラノサウルスの生息密度、個体数についての論文が発表されました。
研究チームは"動物の体重"と"個体群密度"の関係(体重が大きい生物ほど密度は小さくなる法則 = ダムスの法則)を利用して、ティラノサウルスの個体数を推測しています。

それによると、半径6kmの範囲に1頭の割合でティラノサウルスが生息していたと考えています。東京都の広さに約20頭いた計算です。

研究チームの計算によると、米国アラスカ州からメキシコまでの生息地に同時に2万頭のティラノサウルスが生息していて、 約200-300万年の間に、合計25億頭存在したと推定しています(計算では、「1億4000万頭 - 420億頭の間に収まる」結果が出ており、中央値が25億頭となっています)。

初めての論文記載

オズボーンOsbornの論文に記載されたティラノサウルスの骨格図(1905年)∗標本番号AMNH1973の箇所が塗られています
出典:Tyrannosaurus and other Cretaceous carnivorous dinosaurs. Bulletin of the AMNH ; article 14.by Osborn,1905.

ティラノサウルスの名前が初めて論文に掲載されたのは、1905年のことです。 1902年にアメリカ・モンタナ州で発掘された化石(標本番号AMNH 973)にもとづいて、3年後古生物学者オズボーンOsbornが新属"Tyrannosaurus"として命名・記載しました。 論文を発表した時、標本AMNH 973はまだクリーニング中だったそうです。(標本番号AMNH 973は、のちに所蔵博物館が変わったことから、標本番号CM 9380に変更されています)

オズボーンOsbornの論文に記載されたディナモサウルス(標本番号AMNH 5866)のスケッチ(1905年)
出典:Tyrannosaurus and other Cretaceous carnivorous dinosaurs. Bulletin of the AMNH ; article 14.by Osborn,1905.

同じ論文の中には、別属別種としてディナモサウルス"Dynamosaurus imperiosus"も記載されています。 1900年に発掘された標本番号AMNH 5866にもとづいて記載されたものです。 しかし、翌年1906年にオズボーンは、ディナモサウルスをティラノサウルスのシノニム(別名)として記載し直します。 前述の標本番号AMNH 973のクリ-ニングを終えると、両者に明確な差異がなかったのです。 オズボーンがディナモサウルスではなくティラノサウルスの名前を残した理由は、たまたま1905年の論文の中でティラノサウルスの方を先に記載していたからと推察されています。

標本の愛称(ニックネーム)

最大級の人気を誇るティラノサウルスには、愛称(ニックネーム)がついた多くの標本が存在します。
その一部を紹介します。

ブラックビューティー - Black Beauty
標本番号RTMP 81.6.1

愛称ブラック・ビューティー(2009年撮影)

カナダ・アルバータ州Willow Creek層で発見された標本(1980年に釣りに来ていた高校生たちによって露出が見つかり、1982年から本格的な発掘作業が開始されました)。 ブラック・ビューティーの愛称は、化石になる過程でマンガンが染み込んで黒色となったことに由来します。

涙骨上部の特徴から、この個体が若かったことを示唆しています。

原標本(標本番号RTMP 81.6.1)はカナダのロイヤルティレル博物館に所蔵されていますが、日本・茨城県立自然博物館でそのレプリカを観ることができます。

スタン - Stan
標本番号BHI 3033

愛称スタン(2009年撮影)

1987年にアメリカ・サウルダコタ州ハーディング郡で発掘されました。
スタンの頭骨や肋骨などには、傷の治癒した形跡が残されています。

2014年まで、スタンの全身骨格レプリカが東京の国立科学博物館で展示されていました (2018年現在は、愛称バッキ-Bucky(標本番号TCM 2001.90.1)のレプリカが常設展示されています)。

ワンケル・レックス - Wankel Rex
標本番号MOR 555

愛称ワンケル・レックス(2012年撮影)

1988年にアメリカ・モンタナ州チャールズ・マリオン・ラッセル国立野生動物保護区で発掘されました。 原標本(標本番号MOR 555)はアメリカ陸軍の施設が所有し、現在アメリカのスミソニアン国立自然史博物館に貸与されています(2063年まで貸与することで合意)。 ワンケル・レックスの愛称は、発見者のキャシー・ワンケルに由来します。

ワンケル・レックスが死亡した年齢は18歳前後だったと推測されています。

スー - Sue
標本番号FMNH PR 2081

愛称スー(2005年撮影)

スーは1990年にアメリカ・サウルダコタ州のインディアン居住区で発掘されました。 スーの愛称は、発見者の古生物学者スーザン・ヘンドリクソンに由来します。
恐竜の骨格標本では最高レベルとなる90%以上の現存率を誇ります。全長12.3メートルと推定。
生前、負傷のための関節炎や痛風だった痕跡が残されています。死亡したときの年齢は28歳だったと見積もられています。

スーの名前を一般に知らしめたのは、1997年のオークションでしょう。 シカゴのフィールド自然史博物館が760万ドルで落札しました(オークション主催者への手数料を含めて、支払額は約836万ドル(当時のレートで約7億5000万円)だったそうです)。 原標本(標本番号FMNH PR 2081)は、オークションで落札したアメリカ・フィールド自然史博物館が所有しています。

スコッティ - Scotty
標本番号RSM P 2523.8

愛称スコッティ(2023年撮影)

スコッティはカナダ・サスカチュワン州で発見されました。1991年に現地の高校教師と博物館学芸員によって発見され、1994年から本格的な発掘調査が行われました。
スコッティの愛称は、スコッチ・ウィスキーに由来します。発掘現場での祝杯にスコッチを飲んだことに起因するとか。

スーよりも大きく、2019年に体重8870kgと推定されたスコッティがティラノサウルス最大の個体となっています。

ジェーン - Jane
標本番号BMRP 2002.4.1

愛称ジェーン (2018年撮影)

2001年にアメリカ・モンタナ州で発掘されました。
全長6.5mの若い個体でした。死亡時の年齢は11歳と推定されています。別の属ナノティラヌスの可能性も示唆されています。
体格に対して脚が長く、速いティラノサウルスだったようです。

原標本BMRP 2002.4.1は、イリノイ州バーピー自然史博物館に所蔵されています。

ティラノサウルスの化石・切手・イラストギャラリーはこちら

 

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