カルノタウルスとは
学名(属名) | Carnotaurus |
名前の意味 | 肉食のウシ carō(肉)[ラテン語]-taurus(雄牛)[ラテン語] |
分類 | 竜盤目・獣脚類(獣脚亜目・ケラトサウルス下目) |
全長 | 約8m |
食性 | 肉食 |
生息時期 | 白亜紀後期(約7200万年-6990万年前) |
下分類・種名 | Carnotaurus sastrei |
論文記載年 | 1985 |
属名の記載論文 | A horned Cretaceous carnosaur from Patagonia. National Geographic Research. 1 by Bonaparte, José F. 1985. |
特徴

カルノタウルスは白亜紀後期(約7200万年-6990万年前)の南米に生息していました。全長約8m、体重1tと推定されています。
両目の上の大きな円錐状の角と、とても短い手が特徴的です。角の用途についてはよくわかっていませんが、捕食のときの武器や仲間同志のなわばり争いのようなもの、あるいは性差をあらわしている可能性もあります。
頭骨は、他の獣脚類に比べるとアゴの部分が短くなっていました。短さのわりには高さがあり頭骨は頑丈でしたが、対称的に下顎はきゃしゃなつくりをしており、バランスとして違和感のある印象を受けます。
カルノタウルスの頭骨は、高さがあり頑丈な一方で、下顎の骨は比較的華奢で、咬む力自体はティラノサウルスほど強力ではなかったと推定されています。では、どのようにして獲物を仕留めていたのでしょうか。
一説には、強力な咬合力で獲物を押さえつけるのではなく、俊足を生かして獲物に突進し、頭を斧のように振り下ろして深い傷を負わせる「ハチェット(手斧)攻撃」のような狩りを行っていた可能性が指摘されています。また、顎が大きく開いたことから、自分より小さな獲物を丸呑みにしていたという説もあります。極端に短い腕は獲物を掴むのには役立たなかったため、頭と顎、そして自慢のスピードを最大限に活用した、ユニークな狩りのスタイルを確立していたのでしょう。
立体的な視野:カルノタウルスの目は、他の多くの獣脚類よりも前方を向いていました。これにより、両目で獲物との距離を正確に測る「立体視」が可能だったと考えられています。これは、高速で移動しながら獲物を追い詰めるハンターにとって、非常に有利な特徴でした。
4本の指をもつ前足(腕)は極端に短く退化していました。ティラノサウルスよりもはるかに短い腕(前肢)でした。あまりの短さに、腕としての役割は果たせなかったものと考えられています。
皮膚の印象化石も見つかっています。ゴツゴツした小さな骨を含んだ皮膚だったことがわかっています。


白亜紀の俊足ランナー

カルノタウルスの研究で特に注目されているのが、その並外れた走行能力です。化石から、尾の付け根から後肢につながる「尾大腿筋(びだいたいきん)」と呼ばれる筋肉が、他の獣脚類に比べて非常に大きかったことがわかっています。この筋肉は、歩行や走行時に太ももを力強く後ろへ引く役割を担っていました。
巨大なエンジンとも言えるこの筋肉のおかげで、カルノタウルスは獲物を追いかける際に爆発的なスピードを出すことができたと考えられています。ティラノサウルスのような他の大型獣脚類が、巨体を活かしたパワー型のハンターだったとすれば、カルノタウルスは南米の平原を疾走するスピード型のハンターだったのかもしれません。
発見と論文記載

出典:On the palaeobiology of the South American horned theropod Carnotaurus sastrei Bonaparte.
by Mazzetta, Gerardo V.; Fariña, Richard A.; Vizcaíno, Sergio F. 1998.
アルゼンチンの古生物学者ジョゼ・ボナパルト(José Bonaparte)率いる調査隊は、1984年アルゼンチン・チュブットのテュルセンで、尾の後ろの3分の2、下腿骨、 風化によって壊れた後足、頭蓋骨を見つけました。非常に硬い岩石の中に埋もれており、クリーニングには時間を要したようです。
翌年1985年、ジョゼ・ボナパルトは論文"A horned Cretaceous carnosaur from Patagonia."のなかで新属・新種カルノタウルス(Carnotaurus sastrei)を記載しました。
オリジナルのホロタイプ化石(標本番号MACN-CH 894)は、アルゼンチン自然科学博物館で所蔵展示されています。レプリカ標本は多くの博物館で観ることができます。
