スケリドサウルス

スケリドサウルス

Scelidosaurus

スケリドサウルスとは

学名(属名) Scelidosaurus
名前の意味 特別な脚をもつトカゲ
skelos(脚)[ギリシャ語]-eidos(特別な状態)[ギリシャ語]-saurus(トカゲ)[ギリシャ語]
分類 鳥盤目・装盾類(装盾亜目)
全長 約4m
食性 植物食
生息時期 ジュラ紀前期(1億9650万年-1億8300万年前)
下分類・種名 Scelidosaurus harrisonii
論文記載年 1859
記載論文 "Palaeontology", In: Encyclopædia Britannica Edition 8, Volume 17, p.150
by R. Owen 1859.

特徴:装盾類の「設計図」

スケリドサウルスは、後の時代に登場するステゴサウルス(剣竜)とアンキロサウルス(曲竜)の両グループの「設計図」とも言える、基本的な特徴を備えた初期の装盾類です。ジュラ紀前期(約1億9,650万年 - 1億8,300万年前)に生息していました。
体長約4メートル、体重270kgと推定されています。

驚くほど詳細な鎧と皮膚

スケリドサウルスの全身骨格化石
全身骨格化石(2023年撮影)

最新の研究により、その防御システムが驚くほど詳細に明らかになりました。体の表面は、大小様々な皮骨(ひこつ)でびっしりと覆われていました。

  • 首から背中、尾にかけては、左右対称に並んだ、キール(竜骨)のある大きな骨質の板が数列走っていました。
  • 体の側面には、ヤギの角のような、横向きにカーブした鋭い皮骨が並んでいました。
  • そして、これらの大きな鎧の隙間は、鳥の足の裏にあるような、小さな顆粒状のウロコでびっしりと埋め尽くされていました。

生きていた頃は、これらの骨質の鎧はさらにケラチン質の鞘で覆われ、より大きく頑丈だったと考えられます。

意外な生態

スケリドサウルスは基本的に四足歩行でしたが、前あしに比べて後あしが非常に発達していました。このことから、高い場所にある植物を食べる際には、二本足で立ち上がることができたと推測されています。

(*1)皮骨とは

国語辞典によると、「皮膚の真皮内に直接できる結合組織由来の骨」ということです。ケラチン質のウロコに骨成分をもつようになったことが由来です。
現生種の脊椎動物で皮骨をもつ代表例が、ワニ(爬虫類)やアルマジロ(哺乳類)。防御のほかに、保温の役割もあるようです。

スケリドサウルスのイラスト
スケリドサウルスのイラスト

最古の鳥盤目

スケリドサウルスの切手

2025年6月時点において、発見されている恐竜の中でスケリドサウルスが"最古の鳥盤目恐竜"です。
スケリドサウルスが生息した約1億9,650万年前よりも以前、三畳紀後期(約2億3500万年前 - 2億800万年前)には、竜盤目の恐竜-エオラプトルやコエロフィシス(獣脚類)、プラテオサウルス(竜脚形類)などが生息していましたが、いつ、どのようにして鳥盤目恐竜が登場してきたのかを知るためには、さらなる発見、研究を待つ必要があります。

スケリドサウルスの全身骨格化石
全身骨格化石(2023年撮影)

恐竜研究の「ロゼッタ・ストーン」:150年越しの再発見

スケリドサウルスは、1858年にイギリスで発見された、世界で初めてほぼ完全な骨格が見つかった恐竜として、歴史的に非常に重要です。しかし、その最も有名な標本は、発見後150年以上にわたり、ロンドンの博物館の収蔵庫で詳細に研究されないまま眠っていました。

2020年以降、イギリスの古生物学者デイヴィッド・ノーマン博士が、この標本を最新技術で徹底的に再研究し、その驚くべき詳細を次々と発表しました。頭骨から鎧の配置、皮膚の痕跡まで、驚異的な保存状態であったこの化石は、まさに装盾類恐竜の進化の謎を解き明かす「ロゼッタ・ストーン」と呼べるものでした。

この研究により、これまで謎だった多くの点が明らかになり、スケリドサウルスは「最も詳しく分かっている原始的な恐竜」の一員として、再び脚光を浴びることになったのです。