ミクロラプトルとは
学名(属名) | Microraptor |
名前の意味 | とても小さい泥棒 mikros(小さな)[ギリシャ語]-raptor(泥棒)[ラテン語] |
分類 | 竜盤目・獣脚類(獣脚亜目・テタヌラ下目) |
全長 | 約80cm |
食性 | 肉食 |
生息時期 | 白亜紀前期(約1億2000万年前) |
下分類・種名 | Microraptor zhaoianus(模式種) Microraptor gui Microraptor hanqingi ※現在ではM. guiやM. hanqingiは模式種と同種である説が有力。 |
論文記載年 | 2000 |
属名の記載論文 | The smallest known non-avian theropod dinosaur. Nature, 408 by 徐星(Xu, X.), 陈哲(Zhou, Z.), Wang, X. 2000. |
特徴
ミクロラプトルは、白亜紀前期(約1億2000万年前)に生息した、鳥類に近いドロマエオサウルス科の恐竜です。大きさはカラス程度しかありません。 ミクロラプトルの最大の特徴は、4肢すべてに飛ぶための羽毛・羽根を持っていることです。

この翼を使って、ムササビのように木の上から滑空したのか、現生のスズメや鳩のように地上からはばたき飛んだのかは分かっていませんが、 胸骨が大きく、力強く翼を動かせたことは推測できます。昆虫や小さな哺乳類などを捕食していました。

爪は鋭く湾曲していて、枝をつかみやすい形状に変化したものだと考えられています。
論争に決着していませんが、樹上で生活をした可能性もあります。
色素であるメラノソーム組織が保存されていた標本から、ミクロラプトルの羽毛が光沢のある黒色-光を干渉する玉虫色であったことがわかっています。
この羽毛色の知見は、ミクロラプトルが日中に活動していたことを示唆しています。玉虫色の羽毛をもつ現生鳥類が、主に日中帯に活動するからです。 かつては眼窩(目の入っていた窪み)が大きい特徴から夜行性と考えられていましたが、近年、夜行性説は否定されつつあります。
最後の晩餐:化石が語る驚きの食生活
ミクロラプトルの食性については、長年、昆虫や小型哺乳類などと推測されてきましたが、その常識を覆す発見が相次ぎました。驚くべきことに、胃の内容物がそのまま保存された「最後の晩餐」の化石が複数見つかったのです。
- ある標本のお腹の中からは、ほぼ丸呑みにされた原始的な鳥類が見つかりました。
- 別の標本からは、魚の骨が発見されました。
- さらに別の標本からは、トカゲの骨が見つかっています。
これらの発見は、ミクロラプトルが特定の獲物に特化せず、木の上(鳥)、地上(トカゲ)、そして水辺(魚)と、様々な環境で狩りをする、極めて有能なジェネラリスト(何でも食べる捕食者)であったことを示しています。4枚の翼は、こうした多様な狩りを可能にするための、優れた運動性能をもたらしたのかもしれません。
後脚の翼と謎

ミクロラプトルの最も奇妙な点は、前あしだけでなく、後ろあしにも飛行用の風切羽を持っていたことです。この「4枚の翼」をどのように使って空を飛んだのかは、大きな謎であり、科学者の間で活発な議論が交わされてきました。
- 複葉機モデル:当初、後ろあしを横に広げ、初期の複葉機のように上下2段の翼で滑空したとする説が提唱されました。
- タンデム翼モデル:しかし、その後の研究で、股関節の構造から後ろあしを真横に広げるのは難しいことが判明。現在では、後ろあしを体の下、あるいはやや後方に伸ばし、前後2枚の翼(タンデム翼)として安定性を高めながら滑空した、という説がより有力視されています。
2012年、その謎に迫る説が提唱されています。「急旋回するために、後脚の翼が使われていた可能性がある」とのことです。

出典:The smallest known non-avian theropod dinosaur.
Nature, 408
by 徐星(Xu, X.), 陈哲(Zhou, Z.), Wang, X. 2000.
"ナショナルジオグラフィックス"の表紙を飾る

ミクロラプトルを一躍有名にしたのは、1999年世界的な写真誌"ナショナルジオグラフィックス"の表紙を飾ったことがきっかけでした。
この羽毛恐竜は"アルカエオラプトル・リアオニンゲンシス"と命名され新種恐竜として掲載されましたが、 のちに2種類の別種化石が誤って復元されたものであることがわかり、 2000年"ミクロラプトル・ザオイアヌス(Microraptor zhaoianus)"として再定義されました。
ミクロラプトルの切手・化石ギャラリー


