ディロング

ディロング

Dilong

ディロングとは

学名(属名) Dilong
名前の意味 皇帝龍
分類 竜盤目・獣脚類(獣脚亜目コエルロサウルス類ティラノサウルス上科)
全長 約1.6 - 2m
食性 肉食
生息時期 白亜紀前期(約1億2600万年前)
下分類・種名 Dilong paradoxus
論文記載年 2004
属名の記載論文 Basal tyrannosauroids from China and evidence for protofeathers in tyrannosauroids.
Nature. 431
by Xu, X., Norell, M. A., Kuang, X., Wang, X., Zhao, Q., Jia, C. 2004.

特徴

ディロングは、2004年に論文記載された羽毛恐竜。ティラノサウルス類として初めて、羽毛の痕跡が見つかった恐竜でした。

ディロングの全身骨格化石
ディロングの全身骨格化石(2017年撮影)

ディロング唯一の種は、種名paradoxusと名づけられました。ラテン語で、"驚くべき。常識を超えた。逆説的"という意味があります。「ティラノサウルス上科に分類されたディロングが小型で羽毛を持っていたこと」への驚きに由来しています。

属名のDilongは"ディロン"と発音されることも。

ディロングは、白亜紀前期(約1億2600万年前)の中国遼寧省に生息していた羽毛恐竜です。有名な熱河層群から産出しています。

ディロングの頭骨化石
頭骨化石(2017年撮影)

若い個体のほぼ完全な骨格化石が見つかっていますが、全長は約1.6m。骨格の調査から、成体になっても2m程度だったと推定されています。
顎と尾の部分に羽毛の痕跡が残されていました。現生の鳥のものとは異なり、中心軸が無い繊維状の羽毛でした。飛ぶためのものではなく、保温のためだったようです。全身を羽毛が覆っていたと考えられています。

ディロングとティラノサウルスの頭骨比較
ディロングとティラノサウルスの頭骨比較
左:ディロング、右:ティラノサウルス

頭骨や歯の形態は明らかにティラノサウルス上科の特徴を備えていますが、進化したティラノサウルス科とも異なり、前肢は大きく、その指は3本ありました。

ティラノサウルス類のイメージを覆す「原始的な羽毛」

ディロングの発見で最も衝撃的だったのは、その化石に明確な「原羽毛(げんうもう)」の痕跡が残されていたことです。原羽毛とは、鳥の羽のように複雑な構造を持たない、単純な繊維状の毛のようなもので、主に体の保温に使われたと考えられています。

この発見は、後の時代の巨大なティラノサウルス・レックスを含むティラノサウルス類全体の祖先が、もともとは羽毛に覆われていた可能性を強く示唆するものでした。ディロングは体が小さかったため、体温を保つために羽毛が必要だったのかもしれません。後の大型のティラノサウルス類は、体が大きくなるにつれて体温を保ちやすくなったため、羽毛を失っていったと考えられています。

ティラノサウルスの赤ちゃんもフワフワだった?
ディロングの発見により、ティラノサウルスの幼体も、ヒナ鳥のように保温のための羽毛に覆われていたのではないか、という説が有力になりました。恐竜の王者の意外な姿を想像させます。

俊敏なハンター

ディロングの長くて強力な3本指の前肢
ディロングの比較的長くて強力な3本指の前肢(2017年撮影)

ディロングは、後のティラノサウルス科の恐竜とは異なり、比較的長くて大きな前肢(腕)を持っていました。その手には3本の指があり、それぞれに鋭い鉤爪(かぎづめ)が備わっていました。この腕は、獲物を捕らえたり、引き裂いたりするのに強力な武器として使われたと考えられています。

また、ディロングは軽量な体と長い後肢を持っており、非常に素早く走ることができたと推測されています。おそらく、森や開けた場所で、小型の植物食恐竜や哺乳類、トカゲなどを追い詰める、俊敏なハンターだったのでしょう。巨大なティラノサウルスとは異なる、小型捕食者としての生態が浮かび上がってきます。

ディロングの切手・化石ギャラリー