コエロフィシス

コエロフィシス

Coelophysis

コエロフィシスとは

学名(属名) Coelophysis
名前の意味 骨が空洞の形
koilos(空洞の)[ギリシャ語]-physis(形状)[ギリシャ語]
分類 竜盤目・獣脚類 (獣脚亜目・ケラトサウルス下目)
全長 約2.5m
食性 肉食
生息時期 三畳紀後期
下分類・種名 Coelophysis bauri
Coelophysis longicollis
Coelophysis williston
論文記載年 1889
属名の記載論文 On a new genus of Triassic Dinosauria.
The American Naturalist. 23.
by Cope, E.D. 1889.

特徴

コエロフィシスは、三畳紀後期(約2億1000万年前)に出現した初期恐竜の一種です。
体長約2.5m、体重15-30kgほどでした。

コエロフィシス 鉛筆画
コエロフィシス 鉛筆画(2020年自筆)

アメリカ・ニューメキシコ州で、数100体の骨格化石が見つかっています。 首は長く、早く走るために骨に空洞が出来ていました。

コエロフィシスの前足(手)の指は4本でした。そのうち1本は小さく、機能していない状態だったようです。
獣脚類は 進化するにつれて 指の数を減らしていく傾向があります(*1)。 4本指から3本指への進化の過程だったかも知れません。

コエロフィシスの全身骨格化石
全身骨格化石(2017年撮影)

(*1)単純に時期と、獣脚類の指の数の推移を見てみると、進化に伴って数が減っていったことが分かります。
最古に近い恐竜エオラプトルの前足指は5本ありました。
コエロフィシスは指が4本、
ジュラ紀中期のケラトサウルスも4本、
ジュラ紀後期のアロサウルスは3本、
白亜紀後期のティラノサウルスは2本指となっていきます。

軽量ボディの秘密と優れた視力

コエロフィシスの頭骨と目の位置
コエロフィシスの頭骨(2024年撮影)
目は前方を向いており、立体視が可能だった。

コエロフィシスの名前の由来となった「中空の骨」は、鳥類のように内部が空洞になっており、体の軽量化に大きく貢献していました。この軽量な体と、しなやかで長いS字型の首、そして強力な後肢を組み合わせることで、素早く獲物に襲いかかる俊敏なハンターだったと考えられています。

さらに、コエロフィシスの目は頭骨のやや前方を向いていました。これにより、両方の目で対象を見ることで距離感を正確に掴む「立体視」が可能だったと推測されています。この優れた視力は、素早く動き回る昆虫やトカゲなどの小さな獲物を捕らえるのに非常に有利でした。

コエロフィシスの生態

コエロフィシスは群れで行動して、集団で狩りを行ったと考えられています。体重を軽減する中空の骨をもって30kgに満たないほど軽く、長い脚で素早く行動できました(歩幅は75cmと推定されています)。

コエロフィシスの切手

かつて「お腹に子供のものと考えられた化石が残っていたこと」から共食い説がありましたが、のちに腹部に残っていた化石はワニのものであることがわかり、共食い説は否定されました。昆虫や爬虫類を捕食していたようです。

コエロフィシスの群集産状化石
コエロフィシスの群集産状化石(2017年撮影)
アメリカ・ニューメキシコ州のChinle Formation-Ghost Ranch (Whitaker)採石場で発見れました。

発見と論文記載

コエロフィシスの全身骨格化石
全身骨格化石(2012年撮影)

1887年エドワード・コープ(Edward Drinker Cope)は、アメリカ・ニューメキシコ州北西部Chinle Formationでアマチュアの化石収集家によって発見された標本を、コエルルス(Coelurus)属の一種として同定しました。コエルルス(Coelurus)は、ボーンウォーズで知られる競争相手チャールズ・マーシュ(Othniel Charles Marsh)によって1879年に記載された属でした(当時、マーシュはコエルルスを恐竜とは考えていなかったようです)。当時敵意に満ちた相手マーシュが記載した属にもかかわらず、コープはこの標本をコエルルス(Coelurus)の一種に含めました。

しかし、コープは更なる調査を続け、脊椎(背骨)にコエルルス(Coelurus)との差異が認められることを確認します。2年後1889年に新属コエロフィシス(Coelophysis)を設け、自身が同定していた標本を記載・分類し直します。

宇宙を旅した恐竜

コエロフィシスは、地球上だけでなく、宇宙空間にまで到達した恐竜として知られています。

1998年1月22日、アメリカ・カーネギー自然史博物館所蔵のコエロフィシスの頭骨化石が、スペースシャトル「エンデバー」(STS-89ミッション)に乗せられて宇宙へと旅立ちました。この化石は、ロシアの宇宙ステーション「ミール」にドッキングした後、無事に地球へ帰還しました。
三畳紀の地球を駆け回っていた恐竜が、約2億年後に宇宙へ行くという、壮大な時空を超えた物語です。

コエロフィシスの切手・化石ギャラリー