エオラプトルとは
学名(属名) | Eoraptor |
名前の意味 | 夜明けのドロボウ ēōs(暁、夜明け)[ギリシャ語]-raptor(泥棒、略奪者)[ラテン語] |
分類 | 竜盤目・竜脚形類 (竜脚形亜目) |
全長 | 約1m |
食性 | 雑食 |
生息時期 | 三畳紀後期 |
下分類・種名 | Eoraptor lunensis |
論文記載年 | 1993 |
属名の記載論文 | Primitive dinosaur skeleton from Argentina and the early evolution of the Dinosauria. Nature 361. Sereno, P.C., Forster, C.A., Rogers, R.R., and Moneta, A.M. 1993. |
特徴
エオラプトルは三畳紀後期(約2億3000万年-2億2800万年前)に生息した、最初期の恐竜のひとつです。
アルゼンチンで発見されています。長い間獣脚類と考えられてきましたが、2011年の新しい発見・研究により竜脚形類に分類替えされる可能性が出てきました。

エオラプトルは現在知られている中で、最初期に生息していた恐竜のひとつです。
後脚は長く、軽量で、それまでの爬虫類とは比べものにならないくらい速く走れたようです。エオラプトルが繁栄した三畳紀後期(約2億3000万年-2億2800万年前)には、他の小動物にとって大きな脅威となったでしょう。
前足(手)の指は5本あり、そのうちの2本は退化しつつありました。

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エオラプトルは獣脚類か、竜脚形類か?
エオラプトルが記載された1993年以降、2011年まで獣脚類と考えられてきました。後方の歯は肉食恐竜-獣脚類特有の鋭い歯が並んでいます。

論争のきっかけは、2011年に新属恐竜エオドロマエウスが研究されたことでした。
エオドロマエウスは、エオラプトルとほぼ同時期に同地域に生息した恐竜です。発見された当初はエオラプトルの一種と考えられましたが、調査が進むにつれて独自性が見つかり、"エオドロマエウス"は独立した属として記載されました。
2011-2013年エオドロマエウスの調査・研究の過程でエオラプトルとの比較・検証が行われ、その結果、エオラプトルには竜脚形類の特徴が備わっていることがわかったのです。
顎の前方の歯は、原始的な竜脚形類に似て木の葉の形をしていました。また、外鼻孔や前足の指の形体も竜脚形類に似ています。エオラプトルは獣脚類と竜脚形類の両方の特徴を併せもつ恐竜だったのです。
現在では、初期の竜脚形類への分類が有力となっています。
この分類の議論が非常に重要なのは、エオラプトルの位置付けが「すべての恐竜の共通祖先はどのような姿だったのか」という大きな謎を解くカギとなるからです。もしエオラプトルが竜脚形類の祖先なら、植物食への適応が恐竜の歴史の非常に早い段階で始まったことを意味します。この小さな恐竜は、その後の時代に大繁栄する竜盤類(獣脚類と竜脚形類)が、どのように分かれて進化したのかを探る上で、極めて重要な存在なのです。
「最古の恐竜」をめぐる探求
エオラプトルは、しばしば「最古の恐竜」として紹介されますが、恐竜研究の世界ではこの称号をめぐる探求が常に続いています。
エオラプトルと同じアルゼンチンのイスチグアラスト層(Ischigualasto Formation)からは、より大型の初期恐竜ヘレラサウルス (Herrerasaurus) も発見されており、両者は恐竜時代の幕開けを飾る代表的な存在です。さらに、アフリカのタンザニアからは、エオラプトルよりさらに約1000万年古い地層からニアササウルス (Nyasasaurus) と呼ばれる生物の化石が見つかっています。ただし、ニアササウルスの化石は断片的なため、彼が「真の恐竜」なのか、それとも恐竜に最も近い「恐竜のいとこ」のような存在なのか、研究者の間でも意見が分かれています。
このように、エオラプトルは「確実に恐竜と言える中では、最も古い時代に生きていた一種」という、極めて重要なポジションにいるのです。
発見と論文記載
1991年、アルゼンチン・サンフアン大学の古生物学者であるリカルド・マルティネス(Ricardo Martínez)によって発見されました。アルゼンチンIschigualasto FormationのCancha de Bochas泥質の岩石から、12ヶ月かけて掘り出されます。

出典:Primitive dinosaur skeleton from Argentina and the early evolution of the Dinosauria. Nature 361. Sereno, P.C., Forster, C.A., Rogers, R.R., and Moneta, A.M. 1993.
ポール・セレノ(Paul Sereno)、キャサリン・フォースター(Catherine Forster)、レイモンド・ロジャー(Raymond R. Rogers)らによって、1993年、新属エオラプトル(Eoraptor)、新種Eoraptor lunensisが記載されます。
1997年、フィリップス・カリー(Philip Currie)は「鳥盤目と竜盤目、両方の特徴を持つこと」を報告し、さらに2011年のエオドロマエウス記載に伴ってエオラプトルの分類について議論に拍車がかかりました。 発見者マルティネスは2013年、エオラプトルが原始的な竜脚形類であった可能性が高いとする主張をしました。
エオラプトルの切手・化石ギャラリー


