トロサウルス

トロサウルス

Torosaurus

トロサウルスとは

学名(属名) Torosaurus
名前の意味 突き通されたトカゲ
toros(穴のあいた、貫通する)[ギリシャ語]-saurus(トカゲ)[ギリシャ語]
分類 鳥盤目・周飾頭類(周飾頭亜目・角竜下目)
全長 約6 - 8m
食性 植物食
生息時期 白亜紀後期(約6800万年-6600万年前)
下分類・種名 Torosaurus latus
Torosaurus utahensis
論文記載年 1891
記載論文 Notice of new vertebrate fossils.
The American Journal of Science, series 3 42.
by Othniel Charles Marsh. 1891.

特徴

トロサウルスは、現時点で見つかっている古生物・現生の陸棲動物の中で、最大の頭をもつ動物です。

トロサウルスの頭骨化石
トロサウルスの頭骨化石(2011年撮影)

頭骨の長さは2.7mに及び、鼻の上と眼の上に計3本の角を備えています。全長6-8m、体重約5-8tになる最大級の角竜です。

トリケラトプスと同時期・同地域に生息していましたが、トロサウルスのフリルには大きな穴が空いていること(トリケラトプスには無い)、フリル表面上方に伸びる長い鱗状骨などによって見分けることができます。

この巨大なフリルや角は、単なる飾りではありませんでした。多くのトロサウルスのフリルには、他の個体の角によって突き刺されたと考えられる、治癒した傷跡が残っています。これは、彼らが縄張りやメスをめぐって、日常的に激しい闘争を繰り広げていたことを示す、生々しい証拠です。

トリケラトプスと同属か?:世紀の論争とその決着

トロサウルスをめぐる最大の科学的論争は、「トロサウルスは、実は非常に年老いたトリケラトプスの姿なのではないか?」というものでした。

同属説の提唱 (2010年)

トロサウルスの切手

2010年、著名な古生物学者ジャック・ホーナー博士らは、①トロサウルスの化石は成熟した大きな個体しか見つからない ②トリケラトプスのフリルには、穴が開き始める前兆のような薄い部分がある、といった点から、「トリケラトプスは成長の最終段階でフリルに穴が開き、トロサウルスへと姿を変えた」という画期的な説を発表しました。

反論と論争の決着 (2012年以降)

この「トロサウルス = トリケラトプス説」は大きな注目を集めましたが、その後の研究で複数の強力な反証が示されました。

  • 若者のトロサウルス、老人のトリケラトプスの発見:同属説に矛盾する、まだ若い(亜成体)トロサウルスの化石や、骨の組織から明らかに高齢だと分かるのにフリルに穴が開いていないトリケラトプスの化石が確認されました。
  • フリルの骨の構造の違い:トロサウルスのフリルにある穴の周りには、吸収と再成長を繰り返した複雑な骨の構造が見られますが、トリケラトプスのフリルには、そのような構造が見られないことが指摘されました。
  • フリル後縁の小鱗状骨の数:フリルの縁を飾る小さな骨の突起(小鱗状骨)の数が、両者で明確に異なることも分かりました。

これらの証拠により、現在ではトロサウルスとトリケラトプスは、近縁ではあるものの、明確に異なる独立した属であるという結論で科学的なコンセンサスが得られています。

発見と論文記載

トロサウルスの切手

トリケラトプスが記載された2年後の1891年、チャールズ・マーシュに雇われた化石ハンターだったジョン・ベル・ハッチャー(John Bell Hatcher)が、アメリカ・ワイオミング州南東部ランス層(the Lance Formation)で穴の開いた部分的な頭骨、それを覆うフリルの化石を発見します。同年、チャールズ・マーシュ(Othniel Charles Marsh)によって新属新種トロサウルス(Torosaurus latus)が記載されました。

現在、トロサウルス属には、模式種であるTorosaurus latusに加え、アメリカ・ユタ州のより古い地層から発見された、Torosaurus utahensisの2種が含まれています。しかし、*T. utahensis* は、フリルの形状などが異なり、より原始的な特徴を持つため、一部の研究者からは、トロサウルスとは別の新しい属に分類されるべきだ、という意見も出ています。

トロサウルスの切手・化石ギャラリー