パラサウロロフス

パラサウロロフス

Parasaurolophus

パラサウロロフスとは

学名(属名) Parasaurolophus
名前の意味 サウロロフス(トカゲのトサカ)に似たもの
para(近い、似た)[ギリシャ語]-sauros(トカゲ)[ギリシャ語]-lophos(トサカ)[ギリシャ語]
分類 鳥盤目・鳥脚類 (鳥脚亜目・ハドロサウルス科・ランベオサウルス亜科)
全長 約10 - 12m
食性 植物食
生息時期 白亜紀後期
下分類・種名 Parasaurolophus walkeri
Parasaurolophus tubicen
Parasaurolophus cyrtocristatus
論文記載年 1922
属名の記載論文 Parasaurolophus walkeri, a new genus and species of trachodont dinosaur.
University of Toronto Studies: Geological Series. 13
by William A. Parks. 1922.

特徴

パラサウロロフスの切手

パラサウロロフスは、白亜紀後期の北米に生息した大型鳥脚類です。
属名は「サウロロフス(1912年に記載されたモンゴルの大型鳥脚類)に似たもの」という意味ですが、サウロロフス(サウロロフス亜科)とは別のグループ(ランベオサウルス亜科)に属しており、分類学的には特に近縁というわけではありません。

パラサウロロフスの最大の特徴は、頭部から後方へ長く伸びる、管状の骨質のトサカです。この構造は長年の謎でしたが、2021年に報告された、驚くほど完全に保存された頭骨化石の研究によって、その多機能性が明らかになりました。

CTスキャンによる内部構造の分析の結果、トサカは単一の機能ではなく、少なくとも以下の3つの役割を兼ね備えた多機能ツールであったことが確実視されています。

  • 音響(コミュニケーション):内部の複雑な管は、息を吹き込むことで、トランペットのように低周波のユニークな音色を奏でることができました。遠くの仲間とのコミュニケーションや、危険を知らせるのに使われたと考えられます。
  • 視覚(ディスプレイ):種や性別、成熟度によって形や大きさが異なり、仲間を見分けるための重要な視覚的シンボルでした。
  • 体温調節:トサカの内部には無数の血管が張り巡らされており、ラジエーターのように機能して、脳をオーバーヒートから守るための冷却装置の役割も果たしていたと考えられています。

また、皮膚の印象化石も見つかっており、その体は均一な小石のようなウロコ(楯状鱗板)で覆われていたことが分かっています。

パラサウロロフスの化石
全身骨格化石(2011年撮影)

パラサウロロフスの赤ちゃん

2009年、アメリカ・ユタ州Kaiparowits Formationでパラサウロロフスの幼体化石が見つかりました。 2013年論文に掲載され、標本番号RAM 14000でカタログ化されたこの幼体は全長2.5mで、1歳に満たないと推定されることが示されました。
トサカは、大人のパラサウロロフスのようには発達していませんでした。大人のように長い管状ではなく、低く半球状をしており、大人とは違う鳴き声を発していたようです。

パラサウロロフス幼体の頭骨化石
パラサウロロフス幼体の頭骨化石(2016年撮影)
実物化石が、2016年国立科学博物館で開催された[恐竜博2016]で展示されました。
パラサウロロフス成体の頭骨化石
パラサウロロフス成体の頭骨化石(2016年撮影)

発見と論文記載

1920年、カナダ・トロント大学が行っていた白亜紀後期の地層-アルバータ州レッドディア河(Red Deer River)沿いでの野外学習中に、特徴的な頭骨を含む部分骨格を発見します。

パラサウロロフスの記載論文(1922年)
パラサウロロフスの記載論文抜粋-頭骨スケッチ(1922年)
出典:Parasaurolophus walkeri, a new genus and species of trachodont dinosaur.
University of Toronto Studies: Geological Series. 13
by William A. Parks. 1922.

1922年、この時に発見された化石群(標本番号ROM 768)に基づいて、トロント大学の古生物学者ウィリアム・パークス(William A. Parks)は新属新種パラサウロロフス(Parasaurolophus walkeri)を記載します。 種名の"walkeri"は、トロント大学やカナダ国立美術館、オンタリオ州立大学ロイヤル・オンタリオ博物館などで文化教育事業の発展に貢献したバイロン・ウォーカー(Byron Edmund Walker)を敬意を表してつけられたもののようです。

パラサウロロフス属は、現在3種が知られています。
2つ目の種は、1921年アメリカ・ニューメキシコ州のKirtland Formationと呼ばれる地層から発見されました。 部分的な頭骨化石でしたが、スウェーデンの古生物学者カール・ウィマン(Carl Wiman)のもとへ送られ、1931年パラサウロロフスの新種Parasaurolophus tubicenとして記載されます。
3つ目の種は、1961年にジョン・オストロム(John Ostrom)が記載したParasaurolophus cyrtocristatusです。標本番号FMNH P27393でカタログ化された部分的な頭骨と尾、首からなる化石に基づいて記載されました。
3種は頭骨の上のとさかの婉曲ぐあいや長さなどによって区別されています。初めに記載されたParasaurolophus walkeriは、他の2種に比べて、とさか内部は単純で直線的でした。

パラサウロロフスの切手・化石ギャラリー