サウロロフス

サウロロフス

Saurolophus

サウロロフスとは

学名(属名) Saurolophus
名前の意味 隆起のあるトカゲ
sauros(トカゲ)[ギリシャ語]-lophos(トサカ)[ギリシャ語]
分類 鳥盤目・鳥脚類 (鳥脚亜目・ハドロサウルス科)
全長 約9 - 11m
食性 植物食
生息時期 白亜紀後期
下分類・種名 Saurolophus osborni
Saurolophus angustirostris
論文記載年 1912
記載論文 A crested dinosaur from the Edmonton Cretaceous.
Bulletin of the American Museum of Natural History. 31.
by Barnum Brown. 1912.

特徴

サウロロフスの全身骨格化石
全身骨格化石(2013年撮影)

サウロロフスは、モンゴルの代表的なカモノハシ竜です。
サウロロフスが生息していた約7000万年前には、アジアと北アメリカは陸でつながっていました。モンゴルの他に、カナダ・アルバータ州でも発見されています。

サウロロフスの頭には、後方に向かって伸びる、骨でできたスパイク状のトサカがあります。かつて、このトサカはパラサウロロフスのように中が空洞で、音を出すために使われたと考えられていました。しかし、その後の研究で、このトサカは中まで骨が詰まった「無垢の突起」であり、鼻腔とは繋がっていなかったことが明らかになっています。

この「中実のトサカ」は、サウロロフスが属するサウロロフス亜科の大きな特徴です。

サウロロフスの切手

では、どうやって声を出していたのでしょうか? 近年の研究で、その答えはトサカではなく「鼻」にあった可能性が示唆されています。サウロロフスの鼻の周りの骨には非常に大きな窪みがあり、ここには生前、ゾウアザラシのように膨らませることが可能な、巨大な軟組織の袋(鼻腔憩室)があったと考えられているのです。彼らはこの「鼻風船」を膨らませて大きな声を出したり、仲間へのディスプレイとして使ったりしていたのかもしれません。

足には馬と同じような蹄があり、かつ、当時陸つづきだったモンゴルとカナダで見つかっていることから、長距離を移動した可能性も指摘されています。

サウロロフスの皮膚の印象化石
サウロロフスの皮膚の印象化石(2013年撮影)
皮膚の凸凹がはっきりと観察することができます。

トサカの構造について

ハドロサウルス科の恐竜において、トサカの内部構造/役割が異なります。

  • ランベオサウルス亜科:中が空洞のトサカを持ち、トサカ内部で音を共鳴させます。代表的なランベオサウルス亜科は、パラサウロロフス、コストサウルス、オロロティタンなど。
  • サウロロフス亜科:中が詰まったトサカを持つか、トサカがありません。そのため、トサカで音を共鳴することはできなかったはずです。代表的なサウロロフス亜科は、サウロロフス、エドモントサウルス、マイアサウラなど。

タルボサウルスの噛み跡

タルボサウルスに追われるサウロロフス全身骨格化石
タルボサウルスに追われるサウロロフス全身骨格化石(2014年撮影)

サウロロフスが生息した約7000万年前のモンゴルには、アジアの暴君タルボサウルスが闊歩していました。

サウロロフスの上腕骨に残る噛み跡
サウロロフスの上腕骨に残る噛み跡(2013年撮影)

サウロロフスの上腕骨には、肉食恐竜にかまれた傷跡を残した化石も発見されています。 傷跡の大きさから、大型獣脚類-おそらくはタルボサウルスのものと考えられています。

サウロロフスの切手
切手
タルボサウルスに追いかけられるサウロロフス

化石発見と論文記載

サウロロフスの頭骨スケッチ-記載論文抜粋(1912年)
サウロロフスの頭骨スケッチ-記載論文抜粋(1912年)
出典:A crested dinosaur from the Edmonton Cretaceous. Bulletin of the American Museum of Natural History. 31. by Barnum Brown. 1912.

初めに見つかったのは、カナダ・アルバータ州のホースシュー・キャニオン層(Horseshoe Canyon Formation)でした。1911年、アメリカ自然史博物館のバーナム・ブラウン(Barnum Brown)によって発見され、この完全な保存状態の化石には標本番号AMNH 5220が割り当てられます。翌年バーナム・ブラウンによって、新属新種サウロロフス(Saurolophus osborni)として記載されます。

サウロロフスの切手

その後1939年以降、アジア・モンゴルで数多く発見されることになります。カナダの"S. osborni"に対して、アジアのサウロロフスは種名"S. angustirostris"が与えられています。アジアのなかでは、サウロロフスは最も栄えた鳥脚類のひとつと言えるでしょう。

2015年には、モンゴル・ゴビ砂漠から孵化直後の幼体化石も見つかっています。

さらに2022年、カナダ・アルバータ州で、皮膚や鱗、腱や筋肉の一部までが保存された、非常に完全なサウロロフスの「ミイラ化石」の発見が報告され、世界的なニュースとなりました。この奇跡的な標本は、これまで謎だった多くの点を解明し、サウロロフスの生きていた頃の真の姿を私たちに教えてくれると、大きな期待が寄せられています。

サウロロフスの切手・化石ギャラリー