サウロロフスとは
学名(属名) | Saurolophus |
名前の意味 | 隆起のあるトカゲ sauros(トカゲ)[ギリシャ語]-lophos(トサカ)[ギリシャ語] |
分類 | 鳥盤目・鳥脚類 (鳥脚亜目・ハドロサウルス科) |
全長 | 約9 - 11m |
食性 | 植物食 |
生息時期 | 白亜紀後期 |
下分類・種名 | Saurolophus osborni Saurolophus angustirostris |
論文記載年 | 1912 |
記載論文 | A crested dinosaur from the Edmonton Cretaceous. Bulletin of the American Museum of Natural History. 31. by Barnum Brown. 1912. |
特徴

サウロロフスは、モンゴルの代表的なカモノハシ竜です。
サウロロフスが生息していた約7000万年前には、アジアと北アメリカは陸でつながっていました。モンゴルの他に、カナダ・アルバータ州でも発見されています。
サウロロフスの頭には、後方に向かって伸びる、骨でできたスパイク状のトサカがあります。かつて、このトサカはパラサウロロフスのように中が空洞で、音を出すために使われたと考えられていました。しかし、その後の研究で、このトサカは中まで骨が詰まった「無垢の突起」であり、鼻腔とは繋がっていなかったことが明らかになっています。
この「中実のトサカ」は、サウロロフスが属するサウロロフス亜科の大きな特徴です。

では、どうやって声を出していたのでしょうか? 近年の研究で、その答えはトサカではなく「鼻」にあった可能性が示唆されています。サウロロフスの鼻の周りの骨には非常に大きな窪みがあり、ここには生前、ゾウアザラシのように膨らませることが可能な、巨大な軟組織の袋(鼻腔憩室)があったと考えられているのです。彼らはこの「鼻風船」を膨らませて大きな声を出したり、仲間へのディスプレイとして使ったりしていたのかもしれません。
足には馬と同じような蹄があり、かつ、当時陸つづきだったモンゴルとカナダで見つかっていることから、長距離を移動した可能性も指摘されています。

皮膚の凸凹がはっきりと観察することができます。
トサカの構造について
ハドロサウルス科の恐竜において、トサカの内部構造/役割が異なります。
- ランベオサウルス亜科:中が空洞のトサカを持ち、トサカ内部で音を共鳴させます。代表的なランベオサウルス亜科は、パラサウロロフス、コストサウルス、オロロティタンなど。
- サウロロフス亜科:中が詰まったトサカを持つか、トサカがありません。そのため、トサカで音を共鳴することはできなかったはずです。代表的なサウロロフス亜科は、サウロロフス、エドモントサウルス、マイアサウラなど。
タルボサウルスの噛み跡

サウロロフスが生息した約7000万年前のモンゴルには、アジアの暴君タルボサウルスが闊歩していました。

サウロロフスの上腕骨には、肉食恐竜にかまれた傷跡を残した化石も発見されています。 傷跡の大きさから、大型獣脚類-おそらくはタルボサウルスのものと考えられています。

タルボサウルスに追いかけられるサウロロフス
化石発見と論文記載

出典:A crested dinosaur from the Edmonton Cretaceous. Bulletin of the American Museum of Natural History. 31. by Barnum Brown. 1912.
初めに見つかったのは、カナダ・アルバータ州のホースシュー・キャニオン層(Horseshoe Canyon Formation)でした。1911年、アメリカ自然史博物館のバーナム・ブラウン(Barnum Brown)によって発見され、この完全な保存状態の化石には標本番号AMNH 5220が割り当てられます。翌年バーナム・ブラウンによって、新属新種サウロロフス(Saurolophus osborni)として記載されます。

その後1939年以降、アジア・モンゴルで数多く発見されることになります。カナダの"S. osborni"に対して、アジアのサウロロフスは種名"S. angustirostris"が与えられています。アジアのなかでは、サウロロフスは最も栄えた鳥脚類のひとつと言えるでしょう。
2015年には、モンゴル・ゴビ砂漠から孵化直後の幼体化石も見つかっています。
さらに2022年、カナダ・アルバータ州で、皮膚や鱗、腱や筋肉の一部までが保存された、非常に完全なサウロロフスの「ミイラ化石」の発見が報告され、世界的なニュースとなりました。この奇跡的な標本は、これまで謎だった多くの点を解明し、サウロロフスの生きていた頃の真の姿を私たちに教えてくれると、大きな期待が寄せられています。
サウロロフスの切手・化石ギャラリー



