ニジェールサウルス

ニジェールサウルス

Nigersaurus

ニジェールサウルスとは

学名(属名) Nigersaurus
名前の意味 ニジェールのトカゲ
分類 竜盤目・竜脚形亜目・レバキサウルス科
全長 約9m
食性 植物食
生息時期 白亜紀前期 (約1億1500万年~1億500万年前)
下分類・種名 Nigersaurus taqueti
論文記載年 1999
属名の記載論文 Sereno, et al. (1999). Cretaceous sauropods from the Sahara and the uneven rate of skeletal evolution among dinosaurs. Science.

白亜紀の奇妙な「掃除機」

ニジェールサウルスは、白亜紀前期のアフリカに生息していた、レバキサウルス科の竜脚類です。全長約9mと竜脚類の中では比較的小柄で、その最大の特徴は、掃除機の吸い込み口のように幅が広く、まっすぐな歯がずらりと並んだ奇妙な口にあります。この口の形状から「中生代の牛」とも呼ばれ、地面に生えているシダ植物などを効率よく刈り取るようにして食べていたと考えられています。

ニジェールサウルスの全身骨格化石
ニジェールサウルスの全身骨格化石(2009年撮影)

頭骨は非常に軽量化されており、多くの穴が開いている繊細な構造でした。発見者であるポール・セレノ博士は、その頭骨を「ヘルメットというより、紙のように薄い」と表現しています。このため、完全な頭骨化石が見つかることは稀です。

ニジェールサウルスのイラスト
ニジェールサウルスのイラスト

500本以上の歯と驚異的な交換速度

ニジェールサウルスの歯
ニジェールサウルスの歯
500本以上もの歯が密集するデンタルバッテリー構造

ニジェールサウルスのもう一つの驚くべき特徴は、その歯にあります。顎には500本以上もの歯が密集しており、まるでハサミのように機能していました。さらに、CTスキャンの結果、顎の内部には交換用の新しい歯が何層にもわたって準備されていることが判明しました。

研究によると、ニジェールサウルスの歯は、わずか14日という驚異的なスピードで新しいものに生え変わっていたと推定されています。これは、これまでに知られているどの恐竜よりも速い交換率です。硬い植物を食べることですぐに摩耗してしまう歯を、常に新しいものに交換し続けることで、食事の効率を維持していたと考えられます。この特異な歯のシステムは、地面近くの植物を主食とするニジェールサウルスの食性に特化した、究極の適応と言えるでしょう。

発見と命名

ニジェールサウルスの頭骨化石
ニジェールサウルスの頭骨化石(2024年撮影)
幅広の口と歯列が特徴的です。

ニジェールサウルスの最初の化石は、1950年代にフランスの調査隊によってニジェール共和国で発見されましたが、断片的だったため、その重要性はすぐには認識されませんでした。
本格的な研究が始まったのは、1990年代にアメリカの古生物学者ポール・セレノ率いる探検隊が、非常に保存状態の良い頭骨を含む多くの化石を発見してからです。この発見に基づき、1999年にセレノらによって科学雑誌『サイエンス』で正式に記載され、「ニジェールサウルス・タケティ(Nigersaurus taqueti)」と命名されました。種小名は、最初の発見者であるフランスの古生物学者フィリップ・タケに敬意を表したものです。