エドモントサウルス

エドモントサウルス

Edmontosaurus

エドモントサウルスとは

学名(属名) Edmontosaurus
名前の意味 エドモント(カナダの地名・地層名)のトカゲ
Edmonton(エドモント層)[地名]-saurus(トカゲ)[ギリシャ語]
分類 鳥盤目・鳥脚類 (鳥脚亜目・ハドロサウルス科)
全長 約9 - 12m
食性 植物食
生息時期 白亜紀後期(約7300万年-6600万年前)
下分類・種名 Edmontosaurus regalis (模式種)
Edmontosaurus annectens
論文記載年 1917
属名の記載論文 A new genus and species of crestless hadrosaur from the Edmonton Formation of Alberta.
The Ottawa Naturalist. 31.
Lambe, Lawrence M. 1917.

特徴

エドモントサウルスは、白亜紀後期(約7300万年-6600万年前)の北米に生息した最大級のカモノハシ竜です。体重は4000Kgと推定されています。

エドモントサウルスのデンタルバッテリー
エドモントサウルスの下顎化石(2024年撮影)
デンタルバッテリーが観察できます

腹部からは、化石化した針葉樹が多く見つかっています。
口の奥には、最大60の歯が並んでおり、硬い針葉樹の葉や枝を食べてすり減った歯はすぐに新しい歯に生え替わっていました。

肉食恐竜にかまれた傷跡を残した化石も発見されています。
おそらく、同時期・同地域に生息していたティラノサウルスなどの餌食となっていたのでしょう。

エドモントサウルスは、白亜紀最後の時代(マーストリヒチアン)の北米において、最も繁栄した植物食恐竜の一つでした。彼らは巨大な群れを作り、ティラノサウルスのような頂点捕食者にとって重要な食料源となっていたと考えられています。まさに「白亜紀のヌー」とも言える存在であり、恐竜時代の最後の日まで、この地上を闊歩していました。

エドモントサウルスの全身骨格化石
全身骨格化石 (2024年撮影)

ミイラの化石

エドモントサウルスの皮膚の化石は、複数見つかっています。
2009年に千葉・幕張で開催された恐竜展「恐竜2009 -砂漠の奇跡」(日本経済新聞社主催)でも、ミイラ化石が展示されました。

エドモントサウルスの皮膚の化石 通称ダコタ
エドモントサウルスの皮膚の化石 通称ダコタ (2009年撮影)
2007年12月のナショナルジオグラフィックスで紹介され、話題になりました。

エドモントサウルスの研究、特に有名なミイラ化石「ダコタ」の詳細な分析は、私たちの想像を超える事実を明らかにしました。2022年に発表された研究によると、彼らの前足は、これまで考えられていたような肉質の柔らかいパッドではなく、指の骨を包み込むような硬い角質の「ひづめ」を持っていたことが判明したのです。

この発見は、エドモントサウルスが体重を支えるために、馬やサイのような有蹄類と似た構造を進化させていたことを示唆しています。彼らが二足歩行と四足歩行を使い分けていたことを裏付ける強力な証拠であり、その歩き方や生態のイメージを大きく変える、非常に重要な発見です。

エドモントサウルスの切手

目から鼻にかけて筋肉質の袋を持っており、それを膨らませてコミュニケーションをとったり求愛した可能性があります。

頭上に”とさか”

2013年、「エドモントサウルス類の頭には、にわとりのような”とさか”があった」とオーストラリア・ニューイングランド大学の研究チームが発表しました。

カナダ西部で見つかったエドモントサウルスの頭骨化石にミイラ化した軟組織が残っており、長さ33cmのとさかがあったそうです。X線断層撮影では内部に骨は見つからず、柔らい”とさか”だったことがわかりました。

数年後の図鑑には、とさかが描かれたエドモントサウルスの復元図が載るかも知れません。

発見と論文記載

エドモントサウルスの記載論文(頭骨スケッチ)
エドモントサウルスの頭骨スケッチ-記載論文抜粋(1917年)
出典:A new genus and species of crestless hadrosaur from the Edmonton Formation of Alberta. The Ottawa Naturalist. 31. Lambe, Lawrence M. 1917.

1892年、アメリカ・ワイオミング州Lance Formationで発掘された部分的な頭骨(標本番号USNM 2414)に基づいて、チャールズ・マーシュ(Othniel Charles Marsh)によってクラオサウルス(Claosaurus annectens)が記載されます。同じ年にLance Formationで見つかった標本(標本番号YPM 2182)は、1901年初めてアメリカで完全復元された骨格化石として展示されました。

1908年、チャールズ・スタインバーグ(Charles Hazelius Sternberg)は同じLance Formationでクラオサウルス(Claosaurus)の化石を発掘します。このとき発掘した標本(標本番号AMNH 5060)は、アメリカ自然史博物館のヘンリー・オズボーン(Henry Fairfield Osborn)に2000ドルで売却したそうです。

1912年、カナダ南部のレッド・ディア川(Red Deer River)沿いのホースシュー・キャニオン(Horseshoe Canyon)エドモント層で、頭骨、関節脊椎から尾までの椎骨、肋骨、部分臀部、上腕骨、後肢の大部分を含む化石が発掘されます。標本番号NMC 2288でカタログ化された化石に基づいて、1917年ローレンス・ランベ(Lawrence Lambe)によりエドモントサウルス(Edmontosaurus)が記載されます。
その後、1892年にマーシュによって記載されたクラオサウルス(標本番号USNM 2414、YPM 2182))はアナトサウルスを経て、エドモントサウルスに再分類されることになりました。

比較的安価に出回る北米産恐竜

エドモントサウルスの切手

エドモントサウルスは発掘量の多いハドロサウルス類の一属です。産出量が多いので、一般の化石コレクターにも比較的安価に出回る北米産恐竜の代表格です。アメリカ・モンタナ州ヘルクリーク層(Hell Creek Formation)やワイオミング州ランス層(Lance Formation)産出の顎やデンタルバッテリー(歯の列)、爪などの化石が販売されているのを見ることがあります。

私個人でも、エドモントサウルスの顎、肩甲骨などの化石を所有しています。

エドモントサウルスの切手・化石ギャラリー