ダスプレトサウルス

ダスプレトサウルス

Daspletosaurus

ダスプレトサウルスとは

学名(属名) Daspletosaurus
名前の意味 恐るべきトカゲ
dasplētos(恐ろしい)[ギリシャ語]-saurus(トカゲ)[ギリシャ語]
分類 竜盤目・獣脚類(獣脚亜目・テタヌラ類)
全長 約9m
食性 肉食
生息時期 白亜紀後期
下分類・種名 Daspletosaurus torosus
論文記載年 1970
属名の記載論文 Tyrannosaurs from the Late Cretaceous of western Canada.
National Museum of Natural Sciences Publications in Paleontology. 1.
by Russell, Dale A. 1970.

特徴

ダスプレトサウルスの頭骨化石
頭骨化石(2016年撮影)

ダスプレトサウルスは、白亜紀後期の北アメリカに生息した大型肉食恐竜です。推定体長9m、推定体重3600kg。
カナダ・アルバータ州やアメリカ・モンタナ州で発掘されています。ティラノサウルスが出現する少し前に、同地域の食物連鎖の頂点にいました。

ダスプレトサウルスの切手

ダスプレトサウルスと同時期・同地域にゴルゴサウルスも生息しており、複数種の大型肉食恐竜が共存できるだけの食物(植物食恐竜)がいたことを示唆しています。
カナダの古生物学者デイル・ラッセルは、「身体が華奢で個体数の多いゴルゴサウルスはハドロサウルスなどの鳥脚類を獲物にし、個体数の少ない重厚なダスプレトサウルスは角竜や鎧竜を食物としていたのでは」との仮説を提唱しています。

また、若い個体の頭骨化石に、他の肉食恐竜がつけたであろう噛み跡が残っているものも発見されています(標本番号:TMP 94.143.1、TMP 85.62.1)。

ダスプレトサウルスの切手

ティラノサウルスの直接の祖先?進化のミッシングリンク

重厚な体格、2本指をもつ小さな前肢、その似ている骨格。
長い間、ダスプレトサウルスはティラノサウルスの「叔父」のような近縁種と考えられてきました。しかし、2022年に発表された新しい研究により、ダスプレトサウルスはティラノサウルスの「直接の祖先」である可能性が示唆され、大きな注目を集めています。

アメリカ・モンタナ州で発見された複数の化石を年代順に詳細に分析した結果、時間が経るにつれてダスプレトサウルスの骨格の特徴が、徐々にティラノサウルスの特徴へと変化していく様子が確認されました。これは、ある種が枝分かれして別の種が生まれるのではなく、一つの種が時間と共に姿を変えていく「アナジェネシス(直線進化)」と呼ばれる現象かもしれません。

この発見は、ダスプレトサウルスが単なるティラノサウルスの前の時代の王者というだけでなく、約7700万年前から6600万年前にかけて北米大陸の生態系の頂点に君臨し続けた「ティラノサウルス王朝」の起源を解き明かす、重要な鍵であることを示しています。

ダスプレトサウルスの発見と記載

ダスプレトサウルスの頭骨標本スケッチ
ダスプレトサウルスの頭骨標本スケッチ-記載論文抜粋(1970年)
出典:Tyrannosaurs from the Late Cretaceous of western Canada.
National Museum of Natural Sciences Publications in Paleontology. 1.
by Russell, Dale A. 1970.

1921年カナダ・アルバータ州Steveville近郊で、頭骨、前肢、骨盤、大腿骨。脛骨、椎骨を含む部分骨格化石が見つかりました。この標本(標本番号CMN 8506)について、発見者であるチャールズ・スタンバーグ(Charles Mortram Sternberg)は当初「ゴルゴサウルスの一種」と考えていたようです。また、「アルバートサウルスの成体である」と考える学者もいました。

アメリカの古生物学者ラッセル(Dale A. Russell)はアルバートサウルスなどと詳細に比較を行い、1970年、新属新種ダスプレトサウルス・トロスス(Daspletosaurus torosus)として記載しました。

ダスプレトサウルスの切手・化石ギャラリー