カウディプテリクス

カウディプテリクス

Caudipteryx

カウディプテリクスとは

学名(属名) Caudipteryx
名前の意味 尾に羽を持つもの
cauda(尾)[ラテン語]-pteryx(羽)[ギリシャ語]
分類 竜盤目・獣脚類(獣脚亜目・ コエルロサウルス類)
全長 約1m
食性 雑食
生息時期 白亜紀前期(約1億4400万年前-約9900万年前)
下分類・種名 Caudipteryx zoui
Caudipteryx dongi
論文記載年 1998
属名の記載論文 Two feathered dinosaurs from northeastern China.
Nature. 393
by Ji, Q.; Currie, P.J.; Norell, M.A.; Ji, S. 1998.

特徴

カウディプテリクスの化石
カウディプテリクスの化石(2015年撮影)
尾部に羽毛の跡があります。

カウディプテリクスは、1998年に中国で発見された羽毛恐竜です。白亜紀前期(約1億4400万年前-約9900万年前)に生息していました。カウディプテリクスの尾先には、扇形に発達した羽毛が生えていました。

カウディプテリクスの全身骨格化石
全身骨格化石(2011年撮影)

カウディプテリクスの羽毛は飛ぶためのものではありません。
羽毛を前脚にも発達させていましたが、飛ぶことはできなかったようです。現生の鳥類のもつような風切羽とは違い、羽軸にそって対称的に羽毛がついていました。立派な羽は、個体を区別したり、保温、求愛行動に使われた可能性があります。現生動物でいうと、孔雀の羽みたいなもの。

口はくちばしとなっています。上顎には、小さな歯がついていました。
お腹の辺りからたくさんの小石が見つかっており、食べたものの消化を助けるための胃石と考えられています。雑食性だったと考えられています。

カウディプテリクスの切手
カウディプテリクスの切手

恐竜か? それとも鳥か? 巻き起こった大論争

始祖鳥 ベルリン標本(HMN 1880/81)
鳥類の祖先とされる始祖鳥の化石。
カウディプテリクスとの比較が議論を呼んだ。

カウディプテリクスの化石が発見された当初、その進化した羽毛や鳥に似た骨格から、一部の古生物学者は「これは恐竜ではなく、飛ぶことをやめた原始的な鳥の一種ではないか」と考えました。もしそうであれば、鳥の祖先は獣脚類恐竜ではない、別の系統から進化した可能性を示唆することになります。

しかし、その後の詳細な研究により、カウディプテリクスの骨格の基本的な特徴(歯の形状、腕の長さ、骨盤の構造など)は、オヴィラプトルなどに近い獣脚類恐竜のものであることが明らかになりました。現在では、カウディプテリクスは「鳥に進化した系統とは別の、羽毛を持つ獣脚類恐竜」であったというのが定説です。

この論争は、カウディプテリクスがいかに「恐竜」と「鳥」の境界線を曖昧にする存在であるかを示しています。飛ぶためではない、多様な目的で使われた羽毛を持つ恐竜がいたという事実は、鳥類への進化の道のりが一直線ではなかったことを教えてくれます。

羽毛の色が判明!化石が語る生前の姿

近年の研究技術の進歩により、化石に残された「メラノソーム」という色素細胞の痕跡を分析することで、恐竜の羽毛の色を推定できるようになりました。2019年カウディプテリクスの羽毛化石を調査した結果、その色が明らかになっています。

カウディプテリクスの尾羽の化石からメラノソームを分析し、その結果、暗い色で、おそらく玉虫色(構造色)の光沢を持っていた可能性が示唆されています。

発見と論文記載

記載論文に掲載された頭骨スケッチ
カウディプテリクスの頭骨スケッチ-記載論文抜粋(1998年)
出典:Two feathered dinosaurs from northeastern China.
Nature. 393
by Ji, Q.; Currie, P.J.; Norell, M.A.; Ji, S. 1998.

1997年、中国北東部の遼寧省にあるYixian Formationから発見されました。翌年、中国国立地質博物館のジ(Ji Qiang)やカナダ・ロイヤルティレル博物館のフィリップ・カリー(Philip J. Currie)などによって、タイプ種"カウディプテリクス・ゾゥイ(Caudipteryx zoui)"として論文に記載されます。それ以降 合計8体の化石が発掘されていますが、いずれも同地層からの産出となっています。
同地からは、ティラノサウルス類のディロングなども産出しています。

カウディプテリクスの切手・化石ギャラリー