ティタノサウルス類の胎児 - 目の位置で新発見

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アルゼンチンから20年ほど前に米国に密輸された恐竜の卵化石。その中に、驚くべき標本がみつまりました。竜脚類ティタノサウルス類のものとみられる卵の中に、孵化寸前の胎児が入っており、立体的に頭部が残されていたのです。

この胎児は2つの点で、研究者を驚かせました。

  • 眼窩(目の入るくぼみ)の方向が、頭の前の方を向いていました。
    成長した竜脚類だと、横を向いているはずです。
  • 口先に小さな角が生えていました。

植物食であるティタノサウルスの成体は、現生の草食動物(馬や象などと)同様、顔の横に眼がついています。顔の側面-左右についた眼は視野が広く、捕食者の接近などに備えて周囲に気を配ることができます。
今回発見されたティタノサウルスの胎児は、そうではなく顔の前面に両眼がついていました。これは現生の肉食獣(ライオンや熊など)の特徴です。視野を犠牲にして立体的に空間を把握するのに適しており、獲物との距離を計るのに優れています。ティタノサウルスの胎児(おそらく孵化した直後の幼体も)が、「なぜ、視野を犠牲にして、立体的な空間把握を優先したのか」、「成体になる過程で、どのように眼の位置を変化させていったのか」、今回の発見は大きな謎を投げかけました。

もうひとつの特徴-角の用途もよくわかっていません。竜脚類でこのような角をもつ種はみつかっていないからです。眼が前面についていることと角は成体のティタノサウルス類には認められていません。眼の位置と角の役割に関連性があるのかどうかも含めて、今後の研究が待たれます。