トリアルトルス | トリアルツルス(三葉虫)とは
学名(属名) | Triarthrus |
分類 | 三葉虫綱-プティコパリア目オレヌス亜目 |
全長 | 2 - 5 cm |
食性 | 不明 |
生息時期 | オルドビス紀後期 |
下分類・種名 | Triarthrus beckii Triarthrus billingsi Triarthrus eatoni Triarthrus huguesensis Triarthrus latissimus Triarthrus rougensisなど |
論文記載年 | 1832 |
特徴:三葉虫の「ロゼッタ・ストーン」
トリアルトルスは、オルドビス紀後期の海に生息した三葉虫です。しかし、特定の場所から発見される化石によって、三葉虫研究における、極めて重要な存在となりました。
奇跡の化石産地「ビーチャーズ・トリロバイト・ベッド」

アメリカ・NY Lorraine Shale産
マイクレクション
重要な標本となった秘密は、アメリカ・ニューヨーク州の「ロレイン頁岩層(Lorraine Shale)」の中にある、「ビーチャーズ・トリロバイト・ベッド」と呼ばれる特別な地層にあります。当時この場所の海底は、生物の死骸を分解するバクテリアも生息できない無酸素状態でした。
おそらく、嵐などによって海底が急激にかき乱され、生きていたトリアルトルスの群れが一瞬にして泥に生き埋めになりました。そして、無酸素の環境の中、腐敗することなく、その軟組織が黄鉄鉱(Pyrite)という鉱物に置き換わっていったのです。この奇跡的な条件が重なったことで、通常は決して化石に残らない、触覚や脚、消化器が保存されているものがあることです。三葉虫の生きていた頃の姿が封じ込められました。

アメリカ・NY Lorraine Shale産
マイクレクション(2016年に購入したものです)。 裏側リバース標本。黄鉄鉱化することで触角や脚・内部構造が保存されているため、湿気によって錆びる可能性があります。当標本は劣化を防ぐために、薬剤でコーティング保護されています
化石が明かす三葉虫の「解剖図」
この黄鉄鉱化した化石は、三葉虫の体のつくりに関する、私たちの知識を飛躍的に向上させました。
- 脚とエラ:全ての体節に一対の脚があり、その脚の上部には、鳥の羽のようなフィラメント状のエラ(鰓)があったことが初めて明らかになりました。
- 触角:頭部から伸びる、長くてしなやかな一対の触角が確認されました。
- 消化管:食べたものが通る消化管の痕跡も残っていました。
- 繁殖(卵):驚くべきことに、頭部の下に未受精卵を抱えた個体まで発見されており、三葉虫の繁殖生態を知る手がかりとなっています。
ニューヨーク州の脚付トリアルトルス産出地は、現在一般向けには閉鎖されています。大学・研究機関が土地を保有し、今後の発掘調査が待たれている状態です。同地から産出する脚付三葉虫は、市場への流通が制限されることになります。
国内外の業者が集う大きな国内ミネラルショー(展示即売会)では、2016年ごろまで60,000-150,000円で販売されていることがありましたが、最近ではあまり見かけなくなりました。脚や内部構造が観察しやすい裏側リバース標本が、より稀少で高価格帯になるそうです。
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