ワリセロプス(三葉虫)

ワリセロプス

Walliserops

ワリセロプス(三葉虫)とは

学名(属名) Walliserops
名前の意味 ワリサー博士の顔
ドイツの古生物学者O. H. Walliserへの献名-ops(顔)[ギリシャ語]
分類 三葉虫綱-ファコプス目-アカステ科
全長 約2-10cm
食性 不明
生息時期 デボン紀中期
下分類・種名 Walliserops trifurcatus
Walliserops hammii
Walliserops lindoei
Walliserops tridens
論文記載年 2001
模式標本の記載論文 Les Trilobites Asteropyginae du Dévonien de l'Anti Atlas (Maroc).
Palaeontographica. Abteilung A (in French).
Pierre Morzadec. 2001.

特徴

ワリセロプス・トリフルカトゥス(ロングフォーク)の化石
ワリセロプス・トリフルカトゥス(ロングフォーク)-Walliserops trifurcatus
モロッコ産
マイクレクション

ワリセロプス(Walliserops)属は、頭部先にあるフォーク状の三叉突起が特徴的な三葉虫です。

頭部先にある突起の長さによって、通称"ロングフォーク"と呼ばれるワリセロプス・トリフルカトゥス(W.trifurcatus)、"ショートフォーク"と呼ばれるワリセロプス・トリデンス(W.tridens)、ワリセロプス・ハミィ(W.hammii)などの種がいます。これら3種ともに、モロッコ南部-デボン紀中期の地層から発見されています。

ワリセロプス・トリフルカトゥス(ロングフォーク)の化石
ワリセロプス・トリフルカトゥス(ロングフォーク) - Walliserops trifurcatus
モロッコ産
マイクレクション

特に長い三叉突起をもつ通称"ロングフォーク" - ワリセロプス・トリフルカトゥス(W.trifurcatus)は、三葉虫の中でも人気を誇ります。

頭部のフォーク - 三叉の突起(トライデント)の謎

ワリセロプスの最も奇妙な三叉の突起(トライデント)が何のためにあったのかは、長年、古生物学における大きな謎でした。しかし、近年の研究と驚くべき化石の発見により、その答えが見えてきました。

闘争か、魅力か?:カブトムシとの共通点

ワリセロプス・トリフルカトゥスのフォーク
ワリセロプス・トリフルカトゥスの頭部先フォーク
モロッコ産
マイクレクション
三叉の突起が特徴的なワリセロプス

現在最も有力視されているのは、このトライデントがオス同士の闘争や、メスへのアピール(性的ディスプレイ)に使われたという説です。これは、現代のカブトムシやクワガタの角の役割と非常によく似ています。

オス同士がメスや縄張りをめぐって争う際に、相手をひっくり返したり、押しやったりするために、この三叉槍を使ったのかもしれません。「雄雌の性差では?」という推察は、学者たちが議論している仮説です。

決定的証拠?「非対称」の化石

この闘争説を強力に裏付ける、驚くべき化石が発見されています。それは、左右の形が異なる、非対称なトライデントを持つワリセロプスの化石です。これは、闘いの最中に折れたり、あるいは生まれつき奇形であったりした個体だと考えられます。

もしこのトライデントが、海底の泥を掘るための道具だったとしたら、左右対称でなければうまく機能しません。非対称な個体が存在するという事実は、この器官が実用的な道具ではなく、見た目の派手さを競うディスプレイや、闘争に使われた武器であった可能性を示唆しているのです。

ワリセロプスの切手・化石ギャラリー