フタバサウルスの基本データ
学名(属名) | Futabasaurus |
和名 | フタバスズキリュウ |
名前の意味 | 双葉層(発見された地層の名称)のトカゲ |
分類 | 首長竜目・プレシオサウルス上科・エラスモサウルス科 |
全長 | 約7m |
食性 | 肉食(魚食) |
生息時期 | 白亜紀後期(約8000万年前) |
下分類・種名 | Futabasaurus suzukii |
論文記載年 | 2006 |
特徴:日本初のユニークな首長竜
フタバサウルスは、白亜紀後期の日本近海に生息した、エラスモサウルス科の首長竜です。全長約7mと推定されています。その骨格には、他の首長竜には見られない、いくつかの特徴があります。
- 離れた眼窩:左右の眼窩(目の穴)の間隔が非常に広い。
- 長い上腕骨と大腿骨:胸ビレの上腕骨と、後ビレの大腿骨の間に、長い骨(橈骨と脛骨)が接している。
- 短い頸椎:エラスモサウルス科としては、首の骨(頸椎)の一つ一つが比較的短い。
これらの固有の特徴が、フタバサウルスが世界でも他に類を見ない、新属新種の首長竜であることを証明する決め手となりました。
サメの襲撃:化石に残された事件の痕跡

発見されたフタバサウルスの化石の周りからは、80本以上ものサメの歯が見つかりました。これらの歯は、当時の海に生息していたクレトラムナ(Cretalamna)やスクアリコラックス(Squalicorax)といった種類のサメのものと特定されています。フタバサウルスの骨には、これらのサメに噛まれたと思われる傷跡も残っていました。
これが、生きたフタバサウルスがサメの群れに襲われたのか、あるいは死後にその亡骸を食べられたのかは定かではありませんが、当時の日本の海で繰り広げられた厳しい生存競争の様子を、生々しく今に伝えています。

フタバサウルスの発見と学名

フタバサウルスは、和名:フタバスズキリュウ(双葉鈴木竜)として日本で最も有名な首長竜です。その発見は、一人の高校生の情熱から始まりました。
1968年、当時高校2年生だった鈴木直(すずきただし)さんが、福島県いわき市の自宅近くを流れる大久川の河岸で、サメの歯の化石を探している最中に、見慣れない巨大な骨を発見しました。これが、日本で初めてほぼ全身が揃った首長竜の化石の発見の瞬間でした。
この発見は日本の古生物学界に大きな衝撃を与えましたが、比較できる良い標本がなかったため、長らく新種として断定できずにいました。しかし、38年という長い年月を経た2006年、ついに新属新種であることが認められ、発見地の「双葉層群」と発見者の「鈴木さん」に敬意を表して、Futabasaurus suzukii(フタバサウルス・スズキイ)という学名が与えられたのです。
もう一体の「フタバサウルス」?
実は、首長竜にこの名前が正式に付けられる前、福島県で発見された別の恐竜(獣脚類)に対して、日本の研究者が非公式に「フタバサウルス」という愛称を使っていました。しかし、この獣脚類は正式な学名として記載されることはなく、2006年に首長竜がFutabasaurus suzukiiとして記載されたことで、この名前は晴れて首長竜「フタバスズキリュウ」のものとなりました。