ユティランヌス | ユウティラヌス

ユティランヌス | ユウティラヌス

Yutyrannus

ユティランヌス | ユウティラヌスとは

学名(属名) Yutyrannus
名前の意味 羽を持つ暴君
yŭ(羽)[中国語]-tyrannus(暴君)[ラテン語]
分類 竜盤目・獣脚類(獣脚亜目・テタヌラ下目・ティラノサウルス上科・プロケラトサウルス科)
全長 約9m
食性 肉食
生息時期 白亜紀前期
下分類・種名 Yutyrannus huali
論文記載年 2012
記載論文 A gigantic feathered dinosaur from the Lower Cretaceous of China.
Nature. 484.
by Xu, X.; Wang, K.; Zhang, K.; Ma, Q.; Xing, L.; Sullivan, C.; Hu, D.; Cheng, S.; Wang, S.. 2012.

イントロダクション

ユティランヌス(ユウティラヌス)の全身骨格化石
全身骨格化石(2012年撮影)

ユティランヌスの発見は、学者のみならず恐竜・古生物ファンを驚かせました。

それまで小型恐竜に限られていた羽毛の痕跡が、大型獣脚類にも残っていたのです。
しかも、ティラノサウルス上科に属することから<ティラノサウルス・レックスにも羽毛があったのでは>議論に拍車をかけました。実は、ユティランヌスはティラノサウルス・レックスとそれほど近縁ではありません(遠ーい親戚くらい)。それでも議論の中心に据えられるほど、[大型獣脚類に羽毛があったこと]はインパクトのある発見だったのです。

"ユウティラヌス"と表記されることもあります。

特徴

ユティランヌスは、中国遼寧省で発見されたティラノサウルス上科に属する肉食恐竜です。全長9m、体重1410kgと推定されています。

ユティランヌス(ユウティラヌス)の全身骨格化石
全身骨格化石(2017年撮影)

現在までに3体の個体が見つかっていますが、3体ともに15cmほどの羽毛の痕跡を残しています。
ユティランヌスが発見されるまで"羽毛恐竜=小型"だったために、全身に羽毛をもつ大型獣脚類として注目されました。

頭部には、ティラノサウルス類特有の構造に加え、ディスプレイに使われたと考えられる、ゴツゴツした鼻先のトサカが特徴的です。前あしに3本の指が残っている点も、後のティラノサウルス科より原始的であることを示しています。

全身を覆う長い羽毛は、寒冷な気候から身を守るための断熱材として機能したほか、派手な見た目で仲間を識別したり、異性にアピールしたりする役割も持っていた可能性があります。

また、亜成体の標本のお腹のあたりからは、鳥脚類(植物食恐竜)の骨が見つかっています。これは、ユティランヌスが何を食べていたかを示す直接的な証拠であり、彼らがその生態系の頂点捕食者であったことを物語っています。

ユティランヌス(ユウティラヌス)の記載論文抜粋-ティラノサウルス類の系統
ユティランヌス(ユウティラヌス)の記載論文抜粋-ティラノサウルス類の系統(2012年)
出典:A gigantic feathered dinosaur from the Lower Cretaceous of China. Nature. 484. by Xu, X.; Wang, K.; Zhang, K.; Ma, Q.; Xing, L.; Sullivan, C.; Hu, D.; Cheng, S.; Wang, S.. 2012.
ユティランヌスの産状化石
ユティランヌス(ユウティラヌス)の産状化石(2012年撮影)

「家族」の発見?:群れで暮らした証拠

ユティランヌスの発見が科学的に非常に重要だったもう一つの理由は、発見された3体の化石の年齢構成にあります。

この3体は、1体の大人(ホロタイプ標本)、1体の若者(亜成体)、そして1体の小さな子供(幼体)で構成されていました。異なる年齢の個体が同じ場所で一緒に化石になっていたという事実は、彼らが単独ではなく、オオカミのように家族で構成される群れ(パック)で生活し、狩りをしていた可能性を強く示唆しています。

これは、ティラノサウルス類が、単なる獰猛なだけの捕食者ではなく、高度な社会性を持っていたことを示す、非常に貴重な証拠と考えられています。

気候と羽毛

ユティランヌス(ユウティラヌス)の羽毛跡
ユティランヌス(ユウティラヌス)の羽毛跡(2012年撮影)
赤いラインの内側

ユティランヌスが生息した白亜紀前期の中国遼寧省の年平均気温は、約10℃ほどだったと推定されています。これは現在の青森県と同じほどでした。

当時の気温としてはかなり低く、気温と羽毛の関係についても研究が進められています。

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