スティラコサウルスとは
| 学名(属名) | Styracosaurus |
| 名前の意味 |
とげのあるトカゲ
styrako(棘)[ギリシャ語]-saurus(トカゲ)[ギリシャ語] |
| 分類 | 鳥盤目・周飾頭類 (ケラトプス科・セントロサウルス亜科) |
| 全長 | 約5.2〜5.5m |
| 体重 | 約2.7〜3.0t |
| 食性 | 植物食 |
| 生息時期 | 白亜紀後期 (カンパニアン期:約7,650万年前〜7,440万年前) |
| 生息地域 | 北アメリカ大陸西部 |
| 記載年 | 1913年 (Lawrence M. Lambe) |
スティラコサウルスの特徴:巨大な頭と特徴的な角
スティラコサウルスは全長約5.2〜5.5m、体重約2.7〜3.0tと推定される大型の四足歩行恐竜です。その最大の特徴は、全長の約3分の1(約1.5〜2.0m)にも達する巨大な頭部です。
鼻の上には長さ50〜60cmほどの高く直立した1本の角が生えていました。角の化石の表面には太い血管の痕跡が残っており、生きている時はその上にケラチン質(人間の爪や髪と同じ成分)の鞘(さや)がかぶさっていたため、実際の角は化石で見るよりもさらに長大だったと考えられています。目の上の角(上眼窩角)は、近縁な恐竜たちと同じように退化しており、大人になると低く丸みのある小さなふくらみ程度になっていました。
頭の後ろに広がるフリルには、後方へ向かって伸びる長いトゲ(スパイク)が放射状に生えており、角竜の中でもとりわけ派手な姿をしていました。重くなりすぎないよう、フリルの骨には大きな穴(頭頂骨窓)が空いて軽量化されていました。
角竜の仲間(ケラトプス科)は、大きく2つのグループに分けられます。スティラコサウルスのように鼻の角が発達し目の上の角が短い「セントロサウルス亜科」と、トリケラトプスのように目の上の角が長く発達する「カスモサウルス亜科」です。
サイに匹敵する突進力と、選り好みする食事
足跡の化石や3Dコンピューターモデルを使った研究で、スティラコサウルスの運動能力がわかってきました。前足を動かす時、完全にまっすぐではなく、少しだけ肘を外側に向けて歩いていました。この独特な関節の動きと後ろ足の力を組み合わせることで、最大走行速度は現代のゾウを上回り、サイに匹敵するほどの突進力を発揮できたと考えられています。
また、食事のとり方も特徴的でした。スティラコサウルスの口先(くちばし部分)は幅が狭く、手当たり次第に植物を食べるのではなく、シダ類やソテツ類などの中から栄養価の高い部分だけを器用にむしり取る「選択的な植物食」だったようです。
口の奥には「デンタルバッテリー」と呼ばれる、ハサミの刃のように植物を切り刻むことに特化した頑丈な歯がすき間なく並んでおり、硬い植物の繊維も効率よく消化することができました。
「ルベオサウルス」の謎:恐竜研究に衝撃をもたらした化石
かつて、フリルのトゲが前方にカーブする特徴を持つ化石が発見され、「ルベオサウルス」という別の恐竜として分類されていました。 また、フリルのトゲの数や生えている向きがわずかに違うだけで、これまでいくつもの「新種」や「新属」の名前が付けられてきました。
しかし、2020年に発表された「ハンナ(Hannah)」という愛称で呼ばれるスティラコサウルスの頭骨化石が、恐竜研究に大きな衝撃を与えました。この化石は、同じ1匹の恐竜なのに、フリルの右側と左側でトゲの数も形状も全く違っていた(極端な非対称)のです。
「ハンナ(Hannah)」の発見により、「フリルのトゲの形や方向には、私たちが思っていた以上の大きな個体差がある」ことがわかりました。同種内でも個体によってトゲの形状や方向は多様であり、同一個体の左右でさえ非対称になり得ることを示唆したのです。そのため、かつて「ルベオサウルス」と呼ばれていた恐竜も、実は「スティラコサウルスの個体差の範囲内であるか」、あるいは「時代とともにスティラコサウルスが進化していく途中の姿だったのではないか」という見方が主流になっています。
巨大な群れを襲った突然の悲劇
スティラコサウルスが大規模な群れで生活していたことは、カナダ・アルバータ州のダイナソー州立公園で発見された、巨大な「ボーンベッド」から明らかになっています。
このボーンベッドからは、子供から大人まで、数百頭分のスティラコサウルスの化石が一緒に発見されました。当時のこの地域は沿岸の平野で、巨大な熱帯低気圧(現在のハリケーン級)による急な高潮や河川の大氾濫がたびたび起きていました。
巨大な群れで移動していた彼らは、この急激な増水によって逃げ道を失い、群れごと一瞬にして溺死してしまったと考えられています。この悲劇的な化石の記録は、彼らが、年齢層の混ざった巨大な群れをつくっていたことを示しています。
特定の種類の動物の化石が、一ヶ所に大量に密集して発見される地層のことです。群れでの生活や、過去に起きた大規模な自然災害の様子を知る重要な手がかりになります。
傷だらけの戦士たち:化石が語る激しい日常
大きく派手なフリルと角は、仲間を見分けたり、異性にアピールしたりするためだけでなく、激しい戦いの武器や防具としても使われていたことがわかっています。
スティラコサウルスをはじめとする角竜の化石からは、日常的に激しい衝突があったことを示す数多くの傷跡(古病理)が見つかっています。例えば、仲間の角が刺さって穴が開いたフリルや、折れた後に治癒した形跡のある骨などです。中には、深い傷から重い感染症(慢性骨髄炎)にかかり、骨の内部にまで膿(うみ)が溜まっていた痕跡が残る化石も見つかっています。
それでも、傷の周りには新しい骨が分厚く形成されて治癒しようとした跡があり、彼らが致命的なケガや病気を抱えながらも生き抜く、強靭な生命力を持っていたことがうかがえます。
化石に残された骨折の跡や病気の痕跡などを研究する学問です。恐竜たちがどんなケガをし、どんな病気にかかり、どれくらい生き延びたのかなど、その生態をリアルに読み解く重要な手がかりとなります。
初めての論文記載
A new genus and species from the Belly River Formation of Alberta. Ottawa Naturalist
by Lawrence M. Lambe. 1913.
カナダ・アルバータ州で発見された角竜は、1913年に古生物学者ローレンス・ランベ(Lawrence Lambe)によって"スティラコサウルス(Styracosaurus)"と命名されました。
その後、1935年に調査隊によって本格的な再発掘調査が行われ、下顎を含む多くの骨格化石を発掘し、全身の姿が詳しくわかるようになりました。
スティラコサウルスの切手・化石ギャラリー