スピノサウルス

Spinosaurus

スピノサウルス化石


イントロダクション

スピノサウルスの全身骨格化石

全身骨格化石(2009年撮影)

スピノサウルスは、ギガノトサウルスと並ぶ最大級の獣脚類(肉食恐竜)です。全長は13mを超えました。

本来恐竜は陸上を生活圏としていますが、近年の研究により、スピノサウルスが水棲であった可能性が高まってきました。


特徴

スピノサウルスの特徴は、背中の長い帆とワニに似た細長い口(吻部)です。

背中の帆は一番長いところで2mに達しています。この役割については諸説ありますが、水棲であった可能性が高まってきた近年では「水中の舵取りの役目を負っていたこと」が定説になりつつあります。

スピノサウルスの切手

背中の帆と同様にスピノサウルスを特徴づけているのは、歯の形です。 細長い口に並んだ歯の形状は、ナイフ型を基本とするティラノサウルスやアロサウルスなどと形状・縁が異なり、円錐形をしています。ワニに似た形状で、魚を食べるのに適した歯だったようです。

スピノサウルスの全身骨格化石

全身骨格化石(2016年撮影)

スピノサウルスの全身骨格化石

スピノサウルスの全身骨格化石(2016年撮影)
短い後脚

スピノサウルスの後脚が、他の大型獣脚類に比べて、著しく短かったこともわかってきました。

通常獣脚類の重心は後ろにあり体重のほとんどを後脚で支えていましたが、スピノサウルスはその体重を後脚だけで支えるには不向きだったようです。 水中で過ごす時間は水の浮力を利用して体重を支え、陸で過ごすときには四足歩行を行っていたと考えられています。


スピノサウルスが水棲だったと考える根拠

2009年に実施された歯化石の同位体計測から、スピノサウルスの歯がカメやワニ類に近い酸素同位体比をもつことがわかっており、 半水棲であった(水中と陸上の両方を生活拠点としていた)可能性は示唆されていました。 2014年、シカゴ大学などの研究チームは改めて研究結果をまとめ「スピノサウルスは、水中での生活に適していた」とする説を提唱しました。
化石標本をデジタル化して骨格の構造を調べた結果、”浮力を得るのに適した骨密度”や”水中で過ごすのに適した鼻”が備わっていることが分かったのです。

スピノサウルスの吻部先端・センサー

スピノサウルスの吻部先(2016年撮影)
吻部の先端にはたくさんの穴があいています。
食物となる魚を感知するセンサーの役割を果たしていました。

スピノサウルスの吻部先端には、たくさんの穴があいていました。これは、現生のワニにも見られる特徴です。
吻部先端の神経系が発達しており、濁った水中でも食物となる魚を感知するためのセンサーの役目を果たしていたと考えられています。

また、多くの獣脚類の脚の骨は骨壁が薄く空洞になっていることが多いのですが、スピノサウルスの大腿骨や脛骨には空洞がほとんど見つかりません。 後脚の骨に空洞がほとんどないのは水中で過ごす4足歩行動物に見られる特徴で、脚への浮力の影響を減らし、水中で歩くのに適した構造と考えられています。


帆(棘突起)の役割

背中の帆(棘突起)が果たした役割について、以下のような説が提唱されています。

  • 体温調節
  • ディスプレイ(威嚇や異性へのアピールなど)
  • 水中での姿勢制御

 

スピノサウルスの背中の帆(棘突起)

スピノサウルスの背中の帆(棘突起)(2016年撮影)

スピノサウルスが復元された当初、帆(棘突起)は体温調節の機能を果していたと考えれていました。装盾類ステゴサウルスの背板が体温調節の役割を負っていたことはわかっています。
ところが帆(棘突起)の表面・断面を詳細に調べたところ、ステゴサウルスに見られるような血管の跡が無かったことから現在は「体温調節」説(1.)は否定されています。

現在では、「威嚇や異性へのアピールをするためのディスプレイ」説(2.)と「浮力のある水中での姿勢を安定させる機能」説(3.)が有力視されています。


空襲にあったスピノサウルス

Ernst Stromerの論文(1915年) スピノサウルスの模式標本スケッチ

スピノサウルス模式標本(標本番号BSP 1912 Ⅷ19)Spinosaurus aegyptiacusのスケッチ
出典:Ergebnisse der Forshungsreisen Prof. E. Stromers in den Wüsten Ägyptents.
Wirbeltier-Reste der Baharîe-Stufe(unterstes Cenoman) 3.Das Original des Theropoden Spinosaurus aegyptiacus,
von Ernst Stromer, Vorgelegt am 6, Nov. 1915.

1912年、ドイツの古生物学者エルンスト・ストローマーErnst Stromerは、エジプト西部のBahariya層で巨大な恐竜を発見しました。 下顎、歯、頸椎、胴椎、尾骨などが発掘され、1915年、スピノサウルス"Spinosaurus(棘のあるトカゲ)"と名づけて発表します。標本番号BSP 1912 Ⅷ19に基づいた模式種"Spinosaurus aegyptiacus"です。

当時知られた恐竜としては変わった容姿とその大きさから、スピノサウルスの名は広く知れわたり、1936年ストローマーは全身骨格の復元図を公表しています。

1944年、ドイツにも戦渦が広がっていました。 ストローマーはエジプトから持ち帰ったスピノサウルスの化石を安全なところへ避難(移動)させることを提案しましたが受け容れられず、 ドイツ・バイエルン州立古生物・地質博物館に所蔵されていた標本は1944年4月24日、連合軍の空襲によって焼失してしまいました。

1996年モロッコのKemKem Beds層からスピノサウルスのものと見られる中頸椎が見つかっています。 この標本番号NMC 50791の中頸椎は"Spinosaurus maroccanus"のホロタイプ標本で、長さ19.5cmにも及びます。 それ以降2013年に状態の良いスピノサウルスの化石が見つかるまで、「謎の恐竜」と呼ばれることになります。

近年ではモロッコから歯化石が大量に発掘されるようになり、スピノサウルスの歯は安価に入手することができます。


スピノサウルスの切手・化石

スピノサウルスの切手

スピノサウルスの顎化石

顎化石(2004年撮影)

スピノサウルスのセンサー

吻部先端(2016年撮影)

スピノサウルスの頭骨化石

頭骨化石(2016年撮影)


スピノサウルスの基本データ

学名(属名) Spinosaurus
名前の意味 とげを持つトカゲ
spīna(棘)[ラテン語]-saurus(トカゲ)[ギリシャ語]
分類(分岐分類) 竜盤目・獣脚類(獣脚亜目・テタヌラ下目)
体長(大きさ) 約13-15m
食性 魚食
生息時期 白亜紀前期-後期
下分類・種名 Spinosaurus aegyptiacus
Spinosaurus maroccanus
論文記載年 1915
模式標本の記載論文 Ergebnisse der Forshungsreisen Prof. E. Stromers in den Wüsten Ägyptents.
Wirbeltier-Reste der Baharîe-Stufe(unterstes Cenoman) 3.Das Original des Theropoden Spinosaurus aegyptiacus,
von Ernst Stromer, Vorgelegt am 6, Nov. 1915.

 
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