バリオニクスとは
| 学名(属名) | Baryonyx | 
| 名前の意味 | 重いカギ爪 barys(重い)[ギリシャ語]-onyx(カギ爪)[ギリシャ語] | 
| 分類 | 竜盤目・獣脚類(獣脚亜目・テタヌラ下目) | 
| 全長 | 約7.5-8m | 
| 食性 | 魚食 | 
| 生息時期 | 白亜紀前期(約1億2500万年前) | 
| 下分類・種名 | Baryonyx walkeri | 
| 論文記載年 | 1986 | 
| 属名の記載論文 | Charig, A. J.; Milner, A. C. (1986). Baryonyx, a remarkable new theropod dinosaur. Nature, Volume 324. | 
特徴
 
                            
                            バリオニクス(Baryonyx)、属名の意味は"重いカギ爪"。白亜紀前期(約1億2500万年前)、イギリスに生息していました。体長7.5m、体重1.2tと推定されています。
                            バリオニクスのもつ前足の第1指は、約30cmの大きな爪になっています。それが属名"重いカギ爪"の由来となっています。
                        
                            アゴはワニのように細長く、円錐形で「スプーン状」とも表現される形をした96本の歯が生えていました。上顎には顕著な切れ込みがあり、下顎の盛り上がった部分と噛み合うようになっていました。この構造は、滑りやすい獲物(魚)を確実に捕らえるための適応と考えられています。
                            鼻骨後方の上には小さな三角形の鶏冠がありました。また、鼻孔は他の獣脚類に比べて吻部の後方に位置しており、これは水中で狩りをする際に鼻先を水面から出しやすくするための適応であった可能性があります。
                        
 
                            大英自然史博物館所蔵
爪の使い方はよくわかっていませんが、「獲物(魚)を捕らえるときに突き刺した」、「川の水流に堪えるためのアンカーの役割をした」などの説が提唱されています。
 
                        背中の椎骨の神経棘は腰に近づくにつれて高くなっており、特に一本が伸長していることから、後の時代の近縁種スピノサウルスのような巨大な帆ではなく、背中に低いこぶや肉質の隆起があった可能性が示唆されています。
2017年に行われた成長線の骨組織学研究により、成熟したバリオニクス個体(ポルトガルで発見された標本)は23-25歳で死亡していたことがわかりました。この辺りがバリオニクスの寿命だったと推定されています。
化石が発見された場所の堆積物から、バリオニクスが淡水系の環境を好んでいたことがわかります。彼らは広大な氾濫原、沼地、三角州、そして湿地の多いラグーン(潟)といった、水辺の環境で生活していました。この環境は、現在の南イングランドから北フランスにかけて広がっていた広大な淡水・汽水域である「ウィールデン湖」周辺であったとされています。気候は亜熱帯性だったようです。
バリオニクスの食性
 
                        
                            バリオニクスの化石が発見された際お腹部分から魚のうろこの化石が大量に見つかっていることと、ティラノサウルス等の歯とは異なり 歯の縁にステーキナイフのようなギザギザが無く、 その代わりに咥えたものが滑りにくい構造になっていることが、「魚食説」を後押ししています。
                            しかし、「魚だけ食べた」というわけでもなかったようです。未消化の若いイグアノドンの骨もバリオニクスの腹部から発見されています。
                            バリオニクスは主に魚を食べていたものの、顎は大型の獲物と格闘するような極端な力には耐えられなかったと考えられており、比較的小さな動物を狙ったり、大型動物の死骸を食べるスカベンジャー(腐肉食者)であった可能性が示唆されています。
                        
アマチュア化石収集家による発見
 
                            1983年1月、アマチュアの化石収集家ウィルアム・ウォーカーはイギリス・サリーのオークリー(Ockley)近郊で、大きな爪と指骨を見つけました。彼は最初、何の化石か分かりませんでしたが、その重要性に気づき、ロンドン自然史博物館の古生物学者に連絡。同年、イギリスの古生物学者アラン・チャリグ(Alan J. Charig)とミルナー(Angela C. Milner)が博物館スタッフと一緒にその土地の発掘調査を行い、半年間で頭骨を含む骨格の約65%、2tにも及ぶ化石を収集します。ウィルアム・ウォーカーは、先に発見していた大きな爪化石を博物館に寄贈しました。この発見は、それまで謎に包まれていたスピノサウルス科の生態を明らかにする上で、大きなブレークスルーとなりました。
                            1986年アラン・チャリグとミルナーは、世界的な科学誌NATUREで論文"Baryonyx, a remarkable new theropod dinosaur."を発表し、獣脚亜目の新属新種バリオニクス(Baryonyx walkeri)を記載します。
                            
                            属名"Baryonyx"(=重い爪の意味)は第一発見者ウィルアム・ウォーカーを称え、彼が見つけた大きな爪に由来したものです。
                        
バリオニクスの切手・化石ギャラリー
 
                                 
                                 
                                 
                                 
                            