ギガノトサウルスとは
学名(属名) | Giganotosaurus |
名前の意味 | 巨大な南のトカゲ Gigas(巨人)[ギリシャ語]-notos(南の)[ギリシャ語]-saurus(トカゲ)[ギリシャ語] |
分類 | 竜盤目・獣脚類 (カルカロドントサウルス科) |
全長 | 約13m |
食性 | 肉食 |
生息時期 | 白亜紀後期 |
下分類・種名 | Giganotosaurus carolinii |
論文記載年 | 1995 |
属名の記載論文 | A new giant carnivorous dinosaur from the Cretaceous of Patagonia. Nature, Volume 377. by Coria, Rodolfo A.; Salgado, Leonardo. 1995. |
特徴

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ギガノトサウルスは、獣脚類としては最大級の恐竜です。全長は約13mに達し、有名なティラノサウルス・レックスとしばしばその大きさが比較されます。全長ではギガノトサウルスがわずかに上回るものの、骨格の頑丈さや体重ではティラノサウルスに軍配が上がります。
両者の違いは、その狩猟スタイルに明確に表れています。ティラノサウルスの歯が骨をも砕く「クラッシャー」だったのに対し、ギガノトサウルスの歯は薄く鋭い「ステーキナイフ」のようでした。また、脳のサイズ(特に嗅覚や視覚に関わる部分)はティラノサウルスの方が大きく、より洗練された感覚を持っていたと考えられています。ギガノトサウルスは、強大な腕力や知力ではなく、群れでの連携と、獲物を失血させる戦法に特化したハンターだったのです。
「ティラノサウルスの歯は丈夫で、獲物の骨を砕く」のに対し、「ギガノトサウルスの歯は細くて鋭く、獲物の肉を切り裂く」のに適していたと考えられています。ティタノサウルス類(竜脚形類)の近くで見つかったため、自分よりも大きな獲物を捕食していた可能性も示唆されています。
アフリカ大陸と南アメリカ大陸の恐竜
ギガノトサウルスは、アロサウルス上科カルカロドントサウルス科に属しています。頭骨は、北アメリカのティラノサウルスよりも アフリカ大陸のカルカロドントサウルスの特徴と似ています。

アフリカの恐竜カルカロドントサウルスと南アメリカの恐竜ギガノトサウルスが近縁であることは、両大陸が比較的遅い時期まで陸上でつながっていたことの裏づけにもなっています。
狩りの方法:集団で巨大な獲物を襲う

ギガノトサウルスが、地球史上最大級の竜脚類アルゼンチノサウルスなどをどのようにして狩っていたのか、そのヒントは近縁種の化石から見つかっています。
ギガノトサウルスに極めて近い恐竜マプサウルス (Mapusaurus) は、同じアルゼンチンの地層から、子供から大人まで複数の個体がまとまったボーンベッドとして発見されています。これは、彼らが単独ではなく、家族などで構成される群れで行動していたことを示す強力な証拠です。
このことから、ギガノトサウルスも単独で巨大な竜脚類に挑むのではなく、群れで協力して狩りを行っていた可能性が非常に高いと考えられています。彼らは獲物を取り囲み、ナイフのような鋭い歯で次々と深手を負わせ、失血と衰弱によって巨大な獲物が倒れるのを待つ、という戦術をとっていたのかもしれません。それは、まさに陸上の「サメの群れ」とでも言うべき、恐ろしい光景だったことでしょう。
発見と論文記載
1993年、アマチュアの化石ハンターだったキャロリーニ(Rubén D. Carolini)が、アルゼンチン・パタゴニアのヌーケン州Villa El Chocón近郊の荒廃地Candeleros Formationで脛骨の化石を見つけます。化石発見の通報を受けたアルゼンチンの古生物学者ロドルフォ・コーリア(Rodolfo Coria)とレオナルド・サルガド(Leonardo Salgado)が、1994年調査のために現地に派遣されます。
骨格はほぼ70%ほどが保存され、脊柱や胸部、骨盤、大腿骨などを発掘します。これらの化石は、標本番号MUCPv-Ch1でカタログ化されました。

1995年、コーリアとサルガドにより新属新種としてギガノトサウルス(Giganotosaurus carolinii)が記載されます。属名の"Giganotosaurus"は巨大な南のトカゲの意味、種名の"carolinii"は発見者に由来しています。標本番号MUCPv-Ch1は発見者キャロリーニの意思により、発見地そばに建てられたエルネスト・バッハマン古生物学博物館(Ernesto Bachmann Palaeontological Museum)に所蔵・展示されています。
ギガノトサウルスの切手・化石ギャラリー


