ガリミムス

ガリミムス

Gallimimus

ガリミムスとは

学名(属名) Gallimimus
名前の意味 鶏(ニワトリ)の模倣者
gallus(ニワトリ)[ラテン語]-mīmos(もどき、模倣)[ギリシャ語]
分類 竜盤目・獣脚亜目・コエルロサウルス類・オルニトミモサウルス類・オルニトミムス科
全長 約6 - 8m
食性 雑食(植物食中心)
生息時期 白亜紀後期(約7000万年前)
生息地域 アジア(モンゴル・ゴビ砂漠など)
下分類・種名 Gallimimus bullatus
論文記載年 1972年
属名の記載論文 A New Dinosaur, Gallimimus bullatus N. GEN., N. SP. (Ornithomimidae) From the Upper Cretaceous of Mongolia.
Palaeontologia Polonica. 27.
by Osmolska, H.; Roniewicz, E.; Barsbold, R. 1972.

特徴:白亜紀を駆けた最大級の「ダチョウ恐竜」

ガリミムスの骨格化石
骨格化石(2011年撮影)

ガリミムスは、いわゆる「ダチョウ恐竜」と呼ばれるオルニトミモサウルス類の中で最大級の体格をもっていました。

巨大な体にもかかわらず骨格は極めて軽量で空洞化が進んでおり、時速約42〜60キロメートルで走行可能な、白亜紀において最速クラスの陸上動物でした。足には「アークトメタターサル」と呼ばれる特殊な構造があり、走る際の衝撃を効果的に分散していました。

アークトメタターサルとは:
足の甲の骨(中足骨)のうち、真ん中の骨が両サイドの骨に挟まれて上に向かって細く楔(くさび)状になっている構造のことです。これにより足のクッション性が高まり、効率よく走ることができました。

巨大な体に対して頭部は非常に小さく、歯のないくちばしがありました。また、頭の側面に大きな眼がついており、広い視野を確保して背後や側方から接近する肉食恐竜(タルボサウルスなど)をいち早く察知することができたと考えられています。

食性と群れでの生活

ガリミムスの切手

歯を持たないガリミムスが何を食べていたのかについては、長らく議論されてきました。

かつては、くちばしの内側にある構造から水中の微生物やプランクトンなどをこし取って食べる「濾過食」だと考えられたこともありました。しかし現在では、強靭なくちばしで硬い植物を切り取り、巨大な消化管でゆっくりと消化する「植物食を中心とした雑食動物」であったとする説が有力です。ときには、昆虫やトカゲなどの小動物も捕食していたと考えられます。

また、同じ場所から様々な成長段階の個体がまとまって発見されていることから、ガリミムスは高度な社会性を持ち、群れをつくって生活していたことがわかっています。敵に襲われた際には、群れ全体で一斉に逃げ出して、捕食者の的を絞らせないようにしていました。幼い頃は大きな眼と短い吻(口先)を持ち、成長するにつれてくちばしが長く伸びるという、成長に伴う体型の変化も確認されています。

アロメトリー(相対成長)とは:
動物が成長する際に、体全体の成長スピードと特定の器官(目や口先など)の成長スピードが異なることで、体型のバランスが変化することです。人間の赤ちゃんと大人で頭の割合が違うのもこれにあたります。

羽毛と前肢(前あし)の謎

ガリミムスの右前肢後脚化石
ガリミムスの右前肢・後脚化石(2013年撮影)

映画などの影響で、ガリミムスは長年ウロコに覆われた姿で描かれることが多くありました。しかし近年の研究により、ごく近縁のオルニトミムスから羽毛の痕跡が見つかっており、ガリミムスも全身が羽毛に覆われていたことが確実視されています。特に成長した大人の前肢には、飛ぶことはできないものの、求愛行動のディスプレイや卵を温めるための「翼」があったと考えられています。

前肢自体は全体として短く、手首の関節は固定されていました。そのため、手のひらを内側に回して物を「握る」ような動作は不可能でした。前肢は武器としてではなく、植物の枝を寄せたり、地面を引っ掻いて食べ物を探したりするための作業に使われていたようです。

ガリミムス(Gallimimus)のイラスト
羽毛が生えたガリミムスの最新の復元イラスト

発見と分類、映像技術への貢献

ガリミムスの頭骨スケッチ-記載論文
ガリミムスの頭骨スケッチ-記載論文抜粋(1972年)
出典:A New Dinosaur, Gallimimus bullatus N. GEN., N. SP. (Ornithomimidae) From the Upper Cretaceous of Mongolia. Palaeontologia Polonica. 27. by Osmolska, H.; Roniewicz, E.; Barsbold, R. 1972.

ガリミムスの化石は、1963年から始まったポーランドとモンゴルの合同ゴビ砂漠調査隊によって発見されました。このプロジェクトは、複数の女性研究者(ゾフィア・キエラン=ジャウォロスカら)が主導的な役割を果たしたものでした。1972年、モンゴルの古生物学者リンチェン・バーズボールドらとの共同研究、標本番号 IGM 100/11にもとづいて、新属新種として「ガリミムス(Gallimimus bullatus)」が記載されました。標本番号 IGM 100/11は、歪んだ鼻、不完全な下顎、脊椎シリーズ、骨盤などのほぼ完全な骨格で構成されています。
一時期は、頭骨の形が似ていることから北米の恐竜と同じ「オルニトミムス属」にまとめられたり、トロオドン科とともに独自のグループに分類されたりするなど、その分類は二転三転しました。しかし、その後の詳細な研究により、鼻先の形状や四肢の比率などに明確な違いがあることが確認され、現在では独立した「ガリミムス」として確固たる地位を築いています。

また、ガリミムスは、映像の歴史に革命を起こした恐竜でもあります。1993年公開の映画『ジュラシック・パーク』において、白昼の草原を疾走するガリミムスの群れのシーンは、映画史上初めて本格的なコンピュータ・グラフィックス(CGI)で描かれた生物のアクションシーンでした。この技術的なブレイクスルーにより、特撮の主流がストップモーションからCGへと完全に切り替わり、今日の映像技術の基盤がつくられたのです。

ガリミムスの切手・化石ギャラリー