ディプロドクス

ディプロドクス

Diplodocus

ディプロドクスとは

学名(属名) Diplodocus
名前の意味 2つの梁(はり)
diploos(2つの)[ギリシャ語]-dokos(梁)[ギリシャ語]
分類 竜盤目・竜脚形類 (竜脚形亜目・竜脚下目)
全長 約25 - 35m
食性 植物食
生息時期 ジュラ紀後期
下分類・種名 Diplodocus carnegii
Diplodocus hallorum
Diplodocus hayi
Diplodocus longus
論文記載年 1878
属名の記載論文 Principal characters of American Jurassic dinosaurs. Part I.
American Journal of Science. 3.
by Othniel Charles Marsh. 1878.

特徴

ディプロドクスは、竜脚形亜目・竜脚下目に属する有名な恐竜のひとつです。全長20-35m、体重25-30トン前後と推測されています。その体長に比べて体重が軽いのは、細い身体と しっぽがムチのように長いためです。

ディプロドクスの切手

かつて、強い筋肉によって振られたしっぽの先は、音速を超え衝撃波を発生させる「音速のムチ」として機能したという説は非常に有名です。これによって捕食者から身を守ったり、仲間とのコミュニケーションに使ったりしたと考えられてきました。
しかし、2022年に発表されたコンピューターモデリングによる研究では、ディプロドクスの尾の構造では音速(秒速340m)に耐えられず、最高でも秒速33m程度であったと結論づけられています。この説が正しければ、しっぽは防御のための物理的な武器として使われたのかもしれません。現在も議論が続く、興味深いテーマの一つです。

また、同時に複数個体の足跡化石などが見つかっており、これらから群れで生活していた可能性を示唆しています。頸椎(首の骨)は14個で、普段は水平か下向きに保たれていました。

さらに、皮膚の印象化石から、ディプロドクスの背中にはケラチン質でできた長さ18cmにもなる円錐形のトゲが一列に並んでいたことが分かっています。これはワニのように防御やディスプレイに使われた可能性があります。

ディプロドクス(当サイトオリジナル)
ディプロドクス(当サイトオリジナル)

歯の形と胃石

ディプロドクスの口では、鉛筆のように細い歯が前方にだけ並んでいました。口の中で硬い植物を磨り潰すことはできなかったようです。

ディプロドクス子供の頭骨化石
ディプロドクス子供の頭骨(2012年撮影)

他の多くの竜脚形類と同様、ディプロドクスの腹部からも磨耗した石が多く見つかります。胃の中で飲み込んだ石(胃石)を動かして、大量に入ってくる植物を磨り潰して消化していました。

2013年、アメリカの研究チームは歯のエナメル質の下にある象牙質の成長線を調べて、 「ディプロドクスの歯は、35日周期で生え替わっていた」と結論づけています。

セイスモサウルス

1979年にアメリカで発見された大型竜脚形類(標本番号NMMNH P-3690)は、1991年に新属新種セイスモサウルス(Seismosaurus hallorum)として記載されましたが、2004年にディプロドクスと同一属である説が発表されています。

セイスモサウルスの切手(ディプロドクス)
セイスモサウルスの切手
SEISMOSAURUSと記載されていますが、ディプロドクスと同属とする説が有力です

セイスモサウルス(現在は、ディプロドクスと同属)は、2002年千葉・幕張で開催された「世界最大の恐竜博2002」(主催:朝日新聞社、NHK)のマスコットキャラクターにもなりました。

発見と論文記載

最初に発見されたディプロドクスの化石は、1877年アメリカ・コロラド州Cañon Cityから産出しました。ジュラ紀中-後期には湿原だったと考えられている有名なモリソン層-Morrison Formation(約1億5630万年-1億4680万円前の地層)に属する場所です。

マーシュのディプロドクス記載論文抜粋
ディプロドクスを記載した論文抜粋(1878年)
先に記載されたMorosaurusとの比較によって、ディプロドクスが新属であることを主張しています
出典:Principal characters of American Jurassic dinosaurs. Part I. American Journal of Science. 3. by Othniel Charles Marsh. 1878.

古生物学者チャールズ・マーシュ(Othniel Charles Marsh)は、新属新種ディプロドクス・ロングス(Diplodocus longus)を記載しました。

ディプロドクス・カーネギーの記載論文抜粋(1901年)
ディプロドクス・カーネギーの記載論文抜粋(1901年)
Diplodocus (Marsh): Its osteology, taxonomy, and probable habits, with a restoration of the skeleton. Memoirs of the Carnegie Museum, vol. 1. by Hatcher JB. 1901.

ディプロドクスには、模式種ロングス(D. longus)より有名な種がいます。
"鉄鋼王"と称されるアメリカの実業家アンドリュー・カーネギーの支援を受けて発掘された標本番号CM84、古生物学者ジョン・ベル・ハッチャー(John Bell Hatcher)が1901年に記載したディプロドクス・カーネギー(Diplodocus carnegii)です。

このディプロドクス・カーネギーの骨格標本は「ディッピー(Dippy)」という愛称で知られています。カーネギーはイギリス国王エドワード7世の希望に応え、この骨格の精巧なレプリカを作成し、1905年にロンドン自然史博物館へ寄贈しました。これを皮切りに、「ディッピー」のレプリカは世界各国の博物館に寄贈され、ディプロドクスは世界で最も有名な恐竜の一つとなったのです。

ディプロドクスの切手・化石ギャラリー