コンプソグナトゥスとは
学名(属名) | Compsognathus |
名前の意味 | 上品なアゴ kompsos(繊細な)[ギリシャ語]-gnathos(顎)[ギリシャ語] |
分類 | 竜盤目・獣脚類 (獣脚亜目・テヌタラ類) |
全長 | 約1m |
食性 | 肉食 |
生息時期 | ジュラ紀後期 |
下分類・種名 | Compsognathus longipes |
論文記載年 | 1859 |
属名の記載論文 | Über einige im lithographischen Schiefer neu aufgefundene Schildkröten und Saurier. Gelehrte Anzeigen der Bayerischen Akademie der Wissenschaften. 49. by Johann A. Wagner. 1859. |
特徴

コンプソグナトゥスは、ジュラ紀後期のヨーロッパに生息していた小型恐竜です。ドイツとフランスで発見されています。
コンプソグナトゥスは始祖鳥との類似点も多く、羽毛に覆われていた可能性もあります。現在では、中国から産出した羽毛恐竜シノサウロプテリクスと近縁だったと考えられています。
体長は約1m、高さは10~20cmで、ひとの足首&膝丈ほどでした。体重約2.5kgと推定されています。
コンプソグナトゥスの生態
骨格は軽量なつくりをしており、ひざから下の脚が長いことから、速く走ることができたと推定されています。

コンプソグナトゥスの属名の通り、小さな鋭い歯が並ぶものの「その細いアゴでは大きな獲物をかみ砕くことはできなかった」と考えられています。腹部付近からトカゲの化石も見つかっており、昆虫や小さなトカゲを捕らえて食べていたようです。
本当に最小の恐竜だったのか?

コンプソグナトゥスは、発見から長い間「ニワトリほどの大きさの、世界最小の恐竜」として非常に有名でした。実際、最初に発見されたドイツ標本は全長1mに満たない亜成体(子供)の化石でした。
しかし、その後の研究で、より大きなフランス標本が発見されたことや、中国などでミクロラクトルやアンキオルニスといった、さらに小さな恐竜の化石が次々と発見されたことにより、現在では「最小の恐竜」とは言えなくなりました。それでも、コンプソグナトゥスがジュラ紀の生態系において、俊敏な小型ハンターとして重要な役割を担っていたことに変わりはありません。
前足の指は何本だった?論争の歴史
最初に発見されたドイツ標本の保存状態は非常に良好でしたが、前足(手)の部分だけは不明瞭で、指が2本しかないように見えました。そのため、長い間コンプソグナトゥスは「2本指の恐竜」として復元されてきました。
しかし、1970年代に発見されたフランス標本を詳細に研究した結果、実際には3本の指を持っていたことが明らかになりました。3本目の指は他の2本に比べて小さく、不完全だったため、最初の化石では見過ごされていたのです。
この発見は、コンプソグナトゥスがティラノサウルスのような2本指の獣脚類とは異なるグループに属することを示す重要な証拠となりました。一つの化石の状態によって、恐竜の姿の復元が大きく変わるという、古生物学の奥深さを示す良い例です。
発見と論文記載
1859年ドイツのバイエルン州ライデンブルク・ケルハイム地域のPainten Formationの石灰岩堆積物から、全長89cmのほぼ完全な全身骨格が発見されました。始祖鳥で有名なゾルンホーフェンをなす地域です。ジュラ紀後期は湿地帯だったことがわかっています。

ドイツ・バイエルン州ライデンブルク・ケルハイム地域で発掘された標本(標本番号BSP AS I 563)
古細菌学者・動物学者であったヨハン・ワグナー(Johann A. Wagner)は、1859年新属新種としてコンプソグナトゥス・ロンギペス(Compsognathus longipes)と名づけます。ドイツ標本(標本番号BSP AS I 563)として、現在はドイツ・バイエルン国立古生物学研究所に原標本が展示されています。
記載から100年以上経った1971年頃、フランスからも2体目となるコンプソグナトゥスの全身骨格化石が発見されました。ドイツ標本よりも若干大きい全長125cmのもので、フランス南東地域のニース近郊にあるポートランドPortlandの採石場から発掘された標本(標本番号MNHN CNJ 79)です。1983年フランス・パリの国立自然史博物館がそれを取得し、詳細に調べられています。
コンプソグナトゥスの切手・化石ギャラリー

