セントロサウルス

セントロサウルス

Centrosaurus

セントロサウルスとは

学名(属名) Centrosaurus
名前の意味 尖ったトカゲ(角のあるトカゲ)
kentron(角、トゲ)[ギリシャ語]-saurus(トカゲ)[ギリシャ語]
分類 鳥盤目・周飾頭類(周飾頭亜目・角竜下目)
全長 約5.5m
体重 約2トン
食性 植物食
生息時期 白亜紀後期(カンパニアン期)
下分類・種名 Centrosaurus apertus
論文記載年 1904
属名の記載論文 On the squamoso-parietal crest of the horned dinosaurs Centrosaurus apertus and Monoclonius canadensis from the Cretaceous of Alberta.
Proceedings and Transactions of the Royal Society of Canada. 2. 10
by Lambe, L. M. 1904.

特徴と成長による変化

セントロサウルスの切手

セントロサウルスは、白亜紀後期の北アメリカ大陸(現在のカナダ・アルバータ州など)に生息していた中型の草食恐竜です。成体になると体長は約5.5メートル、体重は約2トンに達したと推定されています。

大きな特徴は、頭部の後方に伸びるフリル(頭盾)と、鼻の上の立派な角です。フリルの後縁には、前方に向かって大きく曲がった細長いフック状の突起と、内側にカールした短いフック状の突起が並んでいました。また、フリルの中央には軽量化のための大きな穴(開口部)が開いていました。

個体発生(こたいはっせい)とは?
生物が卵から生まれ、成長して大人(成体)になるまでの過程のことです。セントロサウルスは、数千頭規模の化石が様々な年齢で発見されており、恐竜が成長に伴ってどのように姿を変えるか(個体発生)を研究するのに非常に適しています。

近年の研究により、セントロサウルスは成長に伴って頭部の飾りが劇的に変化することが分かっています。たとえば、子どもの頃の鼻角は丸みを帯びて後ろに反り返っていますが、成長すると真っ直ぐに伸び、完全に成熟すると前方へ向かって湾曲するようになります。また、目の上にあった小さな角(上眼窩角)は、大人になると骨に吸収されて鈍い隆起へと退化してしまいます。

トリケラトプスとセントロサウルスの頭骨スケッチ
トリケラトプスとセントロサウルスの頭骨スケッチ(2009年)
Cranial lesions in horned dinosaurs. 角竜の頭骨を比較したスケッチ
出典:Evidence of Combat in Triceratops.
PLoS ONE. 4
by Andrew A. Farke Ewan D. S. Wolff Darren H. Tanke. 2009.

このような頭部装飾の劇的な変化は、捕食者から身を守るための武器としてよりも、仲間同士でのアピール(視覚的なディスプレイ)や、成熟度を示すシグナルとして機能していた可能性が高いと考えられています。

また、彼らの口には刃物のような歯が密集した構造(デンタルバッテリー)があり、強靭な植物を効率よく切り刻んで食べていました。同じ時代に生息していた他の角竜類(カスモサウルス亜科など)とは、頭骨の深さや鼻先の高さが異なっており、それぞれ違う高さの植物を食べることで見事に食べ分け(ニッチ分割)をして共存していたことが判明しています。

発見の歴史と名前の変遷

セントロサウルスの頭骨化石
頭骨化石(2014年撮影)

セントロサウルスの化石は、1901年に古生物学者のローレンス・ランベによってカナダ・アルバータ州のレッドディア川沿いで初めて発見されました。当初、ランベはこの化石を既存の恐竜の仲間と考え、「モノクロニウス・ダウソニ」という名前で報告しました。しかし、クリーニングが進むにつれてフリルの形が極めて独特であることが判明し、1904年に新属新種「セントロサウルス・アペルトゥス(Centrosaurus apertus)」として正式に命名し直されました。

その後、面白いエピソードとして「現生のトカゲに既に同じ名前(セントロサウルス)が使われている可能性がある」という指摘があり、一時はこの恐竜の名前をエウセントロサウルス(Eucentrosaurus)に変更する試みがありました。しかし、そのトカゲの方が別の種に属することがわかり名前を変えることになったため、晴れてセントロサウルスの名前を使い続けることができたのです。

角竜類は成長による姿の変化や個体差が激しいため、セントロサウルスの分類は長い間混乱していました。かつて別種とされていた「セントロサウルス・ブリンクマニ」も、近年の詳細な分析によって新属コロノサウルスとして独立しました。現在、セントロサウルス属は基準となる1種「セントロサウルス・アペルトゥス(Centrosaurus apertus)」のみを含むと厳密に定義されています。

大洪水による集団死と社会性

長年、角竜類が群れで生活していたのかは推測の域を出ませんでしたが、カナダ・アルバータ州のヒルダ近郊で発見された広大な化石層が、その決定的な証拠となりました。

ここには、数千個体にも及ぶあらゆる年齢のセントロサウルスが単一の群れとして埋まっていました。地質学的な調査の結果、当時この一帯は強烈な熱帯低気圧(ハリケーン)による壊滅的な大洪水に見舞われたことが分かりました。逃げ場を失った巨大な群れは、急激な水位上昇によって、集団で溺死してしまったのです。

この悲劇的な大災害の痕跡は、逆説的にセントロサウルスが同種のみで構成される巨大な群れを作り、季節ごとに大移動を行うような高度な社会性(群居性)を持っていたことを証明することとなりました。

セントロサウルスに悪性腫瘍(ガン)の発見

2020年、セントロサウルスに関する歴史的なブレイクスルーが医学誌に発表されました。カナダの研究チームが、セントロサウルスの足の骨の化石から「悪性腫瘍(ガン)」を特定したのです。

人間のガンの診断に用いられるのと同じ最新のCTスキャンや顕微鏡検査を駆使した結果、その化石の骨の内部には重度の「骨肉腫」が広がっていました。この腫瘍は末期症状と言えるほど骨を破壊しており、この個体は激しい痛みを伴い、まともに歩くことも困難な状態だったと推測されています。

なぜ足手まといの個体が生き残れたのか?
まともに歩けない状態であれば、通常はゴルゴサウルスなどの肉食恐竜にすぐに捕食されてしまいます。しかし、このガンの骨は大規模な洪水で一斉に亡くなった数千頭の群れの中から見つかりました。つまり、この個体は致死的な病気を抱えながらも、仲間の巨大な群れの真っ只中にいることで外敵から守られ、長期間生き延びることができたのです。

この発見は、ガンが現代特有の病ではなく太古の昔から生物の遺伝子に潜んでいた病気であることを示すとともに、セントロサウルスが病に倒れた弱い仲間を群れで庇護するような行動をとっていた可能性を強く裏付けるものとなりました。

セントロサウルスの切手・化石ギャラリー