スミロドン(サーベルタイガー)とは
学名(属名) | Smilodon |
名前の意味 | ナイフのような歯 smilē(彫刻刀)[ギリシャ語]-odous(歯)[ギリシャ語] |
分類 | ネコ目ネコ科マカイロドゥス亜科 |
全長 | 約2m |
食性 | 肉食 |
生息時期 | 新生代第四紀更新世前期 - 更新世末期 (約250万 - 1万年前) |
下分類・種名 | Smilodon fatalis Smilodon californicus Smilodon gracilis Smilodon populator |
論文記載年 | 1842 |
特徴:氷河期のパワーファイター
スミロドンは、新生代の氷河期に南北アメリカ大陸に君臨した、史上最も有名な剣歯虎(サーベルタイガー)です。しかし、その名に反して、現在のトラやライオンの直系の祖先ではありません。「マカイロドゥス亜科」という、独自にサーベル状の犬歯を進化させ、そして絶滅したネコ科のグループに属します。
力でねじ伏せる狩り

スミロドンの骨格は、ライオンよりもがっしりとしており、特に前あしは驚くほど筋肉質でした。これは、彼らが俊敏な追跡者ではなく、待ち伏せ型のパワーファイターであったことを示しています。おそらく、茂みから獲物に飛びかかり、その強力な前あしでバイソンのような大型の獲物を地面にねじ伏せた後、急所である首元に、長くとも脆いサーベル牙を正確に突き立てて、一撃で仕留めていたのでしょう。
仲間を思いやる社会性
ラ・ブレア・タールピットからは、骨折や関節炎といった重傷を負いながらも、その後長期間生き延びた痕跡のあるスミロドンの化石が多数発見されています。自力で狩りができない仲間を、群れの他のメンバーが獲物を分け与えるなどして助けていたと考えられており、彼らがライオンのような高度な社会を築いていたことを示す証拠となっています。
天然の落とし穴:ラ・ブレア・タールピット
スミロドンの化石がこれほど大量に見つかっているのには、ある特別な理由があります。その多くが、アメリカ・ロサンゼルスの中心部に今も存在する「ラ・ブレア・タールピット(La Brea Tar Pits)」から発見されているのです。
ここは、地面から天然のアスファルト(タール)が染み出している場所で、氷河期の昔から、水たまりと間違えて足を踏み入れた動物たちが抜け出せなくなる「天然の落とし穴」でした。動けなくなったマンモスやバイソンのような大型草食獣の助けを求める声に引き寄せられ、それを捕食しようとしたスミロドンもまた、次々とこのタールの罠にはまっていったのです。
この悲劇的な食物連鎖の連鎖によって、ラ・ブレア・タールピットは、氷河期の生態系をそっくり閉じ込めた、世界でも類を見ない化石の宝庫となりました。スミロドンの社会性やケガの痕跡が詳しく分かるのも、この場所のおかげなのです。
サーベルタイガー - スミロドンの食性

スミロドンは、現生の一部ネコ科の動物のように速く走ることはできなかったようです。獲物を押さえつけるための前肢は発達していました。
顎は上下に120度ほど開けることができましたが、獲物の骨をかみ砕けるほどの強度はありません。犬歯が硬い骨に当たって折れてしまうのを避けるため、喉元などの柔らかい部位を狙って突き刺したようです。
上下の顎をかみ合わせることができないことから腐肉食者とする説もありますが、動作の遅い植物食動物を襲っていたとする説が有力です。
氷河期の終わりと共に
約1万年前、地球が温暖化し氷河期が終わると共に、スミロドンはその姿を消しました。その絶滅の主な原因は、彼らの「狩りのスタイル」にあったと考えられています。
気候変動によって、彼らの主な獲物であったマンモスやマストドン、古代のバイソンといった大型の草食動物が次々と絶滅、あるいは数を減らしていきました。大型で動きの遅い獲物を専門に狩るように進化したスミロドンは、この急激な環境の変化に適応できず、獲物たちと運命を共にしたのです。
スミロドンの切手・化石ギャラリー



