メソサウルスとは
| 学名(属名) | Mesosaurus |
| 名前の意味 |
中間のトカゲ
mesos(中間の)[ギリシャ語]-saurus(トカゲ)[ギリシャ語] |
| 分類 | 竜弓類・中竜目・メソサウルス科 |
| 全長 | 約 40 cm - 最大 2.2 m |
| 食性 | 肉食 (主に小型の甲殻類) |
| 生息時期 | ペルム紀前期 |
| 下分類・種名 | Mesosaurus tenuidens |
| 論文記載年 | 1865 |
メソサウルス: 水への適応と巨大化
メソサウルスは細長い頭部をもつ、ペルム紀前期(約2億8000万年前)の内海に生息した初期の水棲有羊膜類(爬虫類)です。
長く強力な尾と、水かきがあったと考えられる大きな後あしを使い、水中を泳いでいました。その骨は密度が高く重くなっており(骨肥厚硬化症)、水中で体が浮くのを抑えて安定性を保つための「重り」として機能していたと考えられます。
かつて、メソサウルスは全長1mほどの「一生を完全に水中で過ごす生き物」だと考えられていました。しかし近年の研究により、最大で全長2.2mにも達する巨大な個体が存在したことが判明しています。 彼らは若い頃は骨の関節が柔らかく、完全に水中で生活していましたが、大きく成長すると骨格がしっかりして陸上(沿岸域)でも過ごせるようになりました。このように、成長に伴って生息場所を変える「年齢別ニッチ分化」を行っていたことが分かっています。
何を食べていたのか?(食性と共食い)
メソサウルスの長く伸びた顎には、まるで櫛のように無数の細長い歯がびっしりと並んでいました。かつては、この細かい歯を「ふるい」のように使い、プランクトンを水ごと吸い込んで濾しとって食べる「濾過摂食(ろかせっしょく)」を行っていたと考えられていました。
しかし、胃の内容物やフン(糞石)の化石を調べた結果、これは間違いであることが分かりました。メソサウルスは主に「ピゴケファロモルファ類」という、エビによく似た体長2cmほどの小型の甲殻類を食べていたのです。細長い歯は、水中で素早く動く獲物を籠のように絡め取って捕まえるのに適していました。
また、彼らが住んでいた内海は非常に過酷な環境でした。そのため、時には死骸や、仲間の幼体を食べる「共食い」をしていた痕跡も見つかっています。
メソサウルスの尾「自切」論争の決着
長年、古生物学者の間で議論の的になっていたのが、メソサウルスの「尾」です。メソサウルスの尾の骨(尾椎)には亀裂のような線が入っていることがあります。そのため、現生のトカゲのように、敵に襲われた際に自ら尾を切り離す「自切(じせつ)」を行っていたという説がありました。
動物が外敵から逃れるために、自分の体の一部(トカゲの尾やカニの脚など)を意図的に切り離す行動のことです。
しかし、最新のX線を使った研究で、この線は自切のためのものではないことが判明しています。これは「複合椎体」と呼ばれる、複数の骨が組み合わさってできた原始的な骨格の構造だったのです。メソサウルスは泳ぐための強力な推進力として尾を使っており、それを自ら切り離すことはなかったと結論づけられています。
分類と頭骨の秘密
古い図鑑などでは、メソサウルスの仲間として「ステレオステルヌム」や「ブラジロサウルス」といった別の属名が紹介されていることがあります。しかし、何百もの標本を調べ直した結果、これらはすべて同じ「メソサウルス(Mesosaurus tenuidens)」の若い個体であったり、化石の保存状態が違うだけのものだったことが分かっています。
さらに近年、極めて保存状態の良い頭骨が見つかったことで、大きな発見がありました。目の後ろに「下側頭窓(かそくとうそう)」と呼ばれる穴が開いていたのです。長らくメソサウルスは、頭の骨に穴がない「無弓類(むきゅうるい)」の代表とされてきましたが、この発見により、初期の爬虫類の進化史が大きく書き換えられることになりました。
卵胎生と世界最古の胚化石
ウルグアイとブラジルで、母親の体内に留まった状態のメソサウルスの赤ちゃんの化石や、胎児の化石が見つかっています。これは、化石記録において世界最古となる有羊膜類の胚(成長途中の赤ちゃん)の発見です。
これらの胚には硬い卵の殻がなく、メソサウルスがお腹の中で卵を孵して赤ちゃんを産む「卵胎生(らんたいせい)」(または胎生)であったことが証明されました。過酷な水の環境で生き残るため、ある程度大きく育ててから出産していたと考えられています。
大陸移動説の「決定的証拠」と大量死
メソサウルスの化石は、現在の大西洋を挟んだ南アメリカ大陸南部とアフリカ大陸南部でしか発見されていません。メソサウルスが広大な海を泳いで渡ることは不可能なため、かつてこの2つの大陸が1つ(パンゲア大陸)につながっていたことを示す「大陸移動説」の強力な証拠となっています。
彼らが住んでいたイラティ・ホワイトヒル内海は、表面は穏やかでも、海底には有毒な硫化水素が溜まっている特殊な環境でした。メソサウルスが関節のつながった美しい化石として大量に見つかるのは、巨大な嵐によって海底の有毒な水が巻き上げられ、一斉に大量死(窒息や中毒)したためだと考えられています。