アサフスとは
学名(属名) | Asaphus |
名前の意味 | 不明瞭なもの asaphēs(不明瞭な)[ギリシャ語]に由来 |
分類 | 三葉虫綱-アサフス目-アサフス科 |
生息時期 | オルドビス紀前期-後期 |
下分類・種名 | Asaphus expansus (模式種) acuminatus broeggeri bottnicus cornutus holmi heckeri intermedius kowalewskii latus punctatus sulevi ※その他多数の種が知られる |
論文記載年 | 1822 |
属名の記載論文 | Des corps organisés fossiles nommés trilobites. In Desmarest, Anselme-Gaëtan. Histoire naturelle des crustacés fossiles. Paris. by Brongiart, Alexandre, 1822. |
特徴

ロシア産
マイコレクション
アサフス属には、アサフス・コルナータス(cornutus)、アサフス・プンクタータス(punctatus)、アサフス・レピドゥルス(lepidurus)、アサフス・エキスパンサス(expansus)、アサフス・ホルミ(holmi)、アサフス・インターメディウス(intermedius)など約20種以上が確認されています。
北欧からロシアにまたがるオルドビス紀後期(約4億6800万年-4億7000万年前)の地層から多く産出します。
特に、ロシア・サンクトペテルブルク郊外のVolkhov River周辺から産出するアサフスは、白っぽい母岩の上に、化石になる過程で方解石に置き換わったキャラメル色の外殻を保持しています。
この色の対比が人気の要因となっているそうです。
胸部の節は8つあります。幼生の頃は浮遊性だった可能性が指摘されています。
潜望鏡:進化の競争
アサフス属の最大の特徴は、種によって著しく異なる、眼のついた柄(眼柄)の長さです。この多様性は、オルドビス紀の海底で繰り広げられた、数百万年にわたる「進化の競争」の結果であると考えられています。
初期の姿:アサフス・エクスパンスス

スウェーデン産
国立科学博物館所蔵
アサフス属の模式種であるアサフス・エクスパンスス (A. expansus) は、属の中でも初期に登場した種です。彼らの眼柄はまだそれほど長くなく、平たい体つきをしていました。
後頭部にひとつ突起があるのも、アサフス・エキスパンススの特徴です。
進化の頂点:アサフス・コワレフスキー

ロシア産
マイコレクション
時代が進むにつれて、海底には他の生物の活動によって、より多くの砂や泥が堆積するようになりました。これに適応するため、アサフスたちは体を砂泥に隠し、目だけを潜望鏡のように突き出して獲物や捕食者を見張るという生存戦略を発達させました。より深く潜れるよう、眼柄はどんどん長くなっていったのです。
その進化の頂点に立つのが、カタツムリのような非常に長い眼柄を持つアサフス・コワレフスキー (A. kowalewskii) です。また、眼柄が中くらいの長さの種や、短い種など、多様なアサフスが同じ時代に生息していました。これは、それぞれの種が砂泥に潜る「深さ」というニッチ(生態的地位)を使い分けることで、巧みに共存していた証拠だと考えられています。
アサフス・レピデュルス(レピドゥルス)

ロシア産
マイコレクション
現在までに記載されている20種類以上のアサフス(Asaphus)の中で、A.broeggeri (A.ブレッゲリ)に次いで2番目に古い種類で、オルドビス紀前期(約4億8000万年前)に生息していました。 以降の多くのアサフス(Asaphus)の共通の祖先と考えられています。
Asaphus 初めての論文記載
出典:Des corps organisés fossiles nommés trilobites.
by Brongiart, Alexandre
In Desmarest, Anselme-Gaëtan. Histoire naturelle des crustacés fossiles. Paris: L.-T. Cellot.
アサフスが初めて記載されたのは、1822年にアレキサンドル・ブロンニャール(Alexandre Brongiart)が記した論文"Des corps organisés fossiles nommés trilobites."の中です。
アレキサンドル・ブロンニャールは、フランスの化学者、鉱物学者、動物学者です。 セーブル国立製陶所で鉱物や陶磁器の製造に関する化学の知識を学び、パリ近郊の地質学や三葉虫についても研究の幅を広げました。国立陶器博物館の創立者でもあります。
アサフスの切手・化石ギャラリー


