チレサウルス

チレサウルス

Chilesaurus

チレサウルスとは

学名(属名) Chilesaurus
名前の意味 チリのトカゲ
分類 竜盤目・獣脚類 (獣脚亜目・テタヌラ下目)
全長 約3m
食性 植物食
生息時期 ジュラ紀後期(約1億4500万年前)
下分類・種名 Chilesaurus diegosarezi
論文記載年 2015
属名の記載論文 An enigmatic plant-eating theropod from the Late Jurassic period of Chile.
Nature 522.
by Novas, F. E.; Salgado, L.; Suárez, M.; Agnolín, F. L.; Ezcurra, M. N. D.; Chimento, N. S. R.; de la Cruz, R.; Isasi, M. P. et al. 2015.

特徴

チレサウルスの頭骨化石
頭骨化石(2016年撮影)
歯は、植物を咀嚼するのに適した平らな形

2004年、南米チリのジュラ紀後期の地層から発見された化石は当初、複数の種類の恐竜として報告されています。のちにこれらが奇妙な単一種のものだとわかり、2015年「チレサウルス」と命名され論文記載されました。

獣脚類=肉食・雑食恐竜のイメージをつくがえす恐竜、肉食恐竜のすべてが属する獣脚類でありながら、チレサウルスは植物食性(植物食)と考えられています。
チレサウルスの歯の形は、植物食動物の特徴である葉状になっています。恥骨が他の獣脚類に比べてやや後方に向いているのは、大量の植物を消化するため器官の大型化に起因していると考えられています。

奇妙な恐竜

チレサウルスの全身骨格化石
全身骨格化石(2016年撮影)

「何が奇妙なのか」
骨盤はステゴサウルスやトリケラトプスなどの鳥盤目の特徴をもち、4本指の広い後足はまるで古竜脚形類のようです。
後脚や頸椎にはティラノサウルスやスピノサウルスが属する獣脚類の特徴がみられます。

チレサウルスが複数の恐竜分類の特徴を併せもつことから、研究チームはカモノハシ(カモのくちばしとビーバーの尾、かわうその足をもつ哺乳類)に例えています。

恐竜の進化ツリーを揺るがす大発見

チレサウルス(Chilesaurus)のイラスト
チレサウルスのイラスト

チレサウルスの発見が世界に衝撃を与えた最大の理由は、その奇妙な体の特徴が、恐竜の進化への解釈を書き換える可能性を秘めていたからです。

2017年に発表された研究では、チレサウルスの骨格を詳細に分析した結果、これまで恐竜の2大グループとされてきた「竜盤類(獣脚類や竜脚形類を含む)」と「鳥盤類(ステゴサウルスやトリケラトプスを含む)」の、最も初期の共通祖先に近い存在、あるいは原始的な鳥盤類そのものではないか、という説が提唱されました。

分類はいまだ議論の的:この説は大きな議論を呼び、現在もチレサウルスを獣脚類と見なす研究者も多く、結論は出ていません。しかし、この恐竜が獣脚類と鳥盤類の両方の特徴を併せ持つことは事実であり、恐竜たちがどのように多様な形に進化していったのかを解き明かすための、非常に重要な「鍵」であることは間違いありません。