ディロフォサウルスとは
| 学名(属名) | Dilophosaurus | 
| 名前の意味 | トサカが2つあるトカゲ di(2つの)[ギリシャ語]-lophos(隆起)[ギリシャ語]-saurus(トカゲ)[ギリシャ語] | 
| 分類 | 竜盤目・獣脚類 (獣脚亜目) | 
| 全長 | 約6m | 
| 食性 | 肉食 | 
| 生息時期 | ジュラ紀前期 | 
| 下分類・種名 | Dilophosaurus wetherilli | 
| 論文記載年 | 1970 | 
| 属名の記載論文 | Dilophosaurus (Reptilia: Saurischia), a new name for a dinosaur. Journal of Paleontology. 44. by Samuel P. Welles. 1970. | 
特徴
 
                            
                            ジュラ紀前期のアメリカや中国に生息した肉食恐竜です。ディロフォサウルスは、ジュラ紀前期の獣脚類-肉食恐竜として大型化への傾向が見られた最初の属(種)でした。全長約6m、体重400kgと推定されています。
                            
                            頭頂部の2枚のトサカが特徴的です。中国でみつかるディロフォサウルスのトサカは、アメリカで産出されたものよりも低いそうです。
                        
頭上のトサカ
                            頭頂部の平たい骨質は、発見された当初には「化石になる過程で頭骨が潰れたもの」と考えられていました。
                            
                            その後、状態の良い頭骨の化石が見つかり、それが 「潰れたものではなく、ディロフォサウルスの特徴となるトサカであること」が分かりました。
                        
 
                            特徴的なトサカの骨の内部には、鳥類のように空気が入る空間(含気腔)があり、見た目に反して軽量かつ頑丈な構造だったこともわかっています。
                                鳥類との意外なつながり?
                                
                                トサカの内部に空洞があるという特徴は、ディスプレイ(見た目)だけでなく、鳥の鳴き袋のように共鳴させて大きな音を出すのに役立った可能性も示唆しており、今後の研究が期待されます。
                            
最新研究が明かす「屈強なハンター」の姿
長い間、ディロフォサウルスは華奢なアゴと弱い噛む力を持つ、スカベンジャー(腐肉食者)に近い恐竜だと考えられてきました。しかし、2020年に発表された5体の標本の包括的な再研究により、そのイメージは大きく覆されました。
研究の結果、ディロフォサウルスの顎の骨は非常に頑丈で、強力な筋肉が付着していたことが判明しました。これにより、大型の獲物を捕らえて仕留めることができた、ジュラ紀前期における頂点捕食者の一つであった可能性が高まりました。
ワニに似た?奇妙な顎の切れ込み
 
                            ディロフォサウルスの頭骨をよく見ると、鼻のすぐ下、上顎の歯列の途中に奇妙な切れ込み(Subnarial gap)があるのがわかります。この切れ込みによって前の歯と後ろの歯が分断されており、かつて顎の力が弱いと考えられていた一因でもありました。
しかし、この構造はスピノサウルスやワニなど、主に魚を食べていた動物にも見られる特徴です。そのため、ディロフォサウルスは陸上の動物だけでなく、川や湖の魚なども捕らえていたのではないかと考えられています。強力な前肢の爪で獲物を押さえつけ、この切れ込みのある顎で滑りやすい魚などをしっかりと固定して食べていたのかもしれません。
ディロフォサウルスの分類
 
                        
                            ディロフォサウルスの分岐分類については、様々な説があります。
                            
                            コエロフィシス上科やカルノサウルス下目に加える説とテタヌラ下目とする説があります。結論は、今後の研究成果を待つ必要がありそうです。
                        
発見と論文記載
 
                        1942年カリフォルニア大学古生物学博物館がアリゾナ州北部で脊椎動物の化石発掘調査を行った際、3つの恐竜化石を発見しました。このうち1つは腐食が激しく持ち帰ることはできませんでしたが、2つの標本(標本番号UCMP 37302、UCMP 37303)を持ち帰り2年かけてクリーニングします。
                            1954年、化石発掘調査を行ったメンバーのひとりだったサミュエル・ウェルズ(Samuel P. Welles)は、既知の属だったメガロサウルスの一種(Megalosaurus wetherilli)と同定しました。頭上のとさか部分は頭骨左側の欠けた部分が延びたものと考えられ、四肢の比率がメガロサウルスのものに似ていたのです。
                            
                            ところが、1964年以降保存状態の良い標本が発見され、とさかの骨質部が生前からその位置にあったことが明らかになり、標本(標本番号UCMP 37302、UCMP 37303と新たに見つかっていたUCMP 77270)が再調査されます。改めて、メガロサウルスと調査対象の標本を比較が行われ、新しい属名が必要であるとの結論に至ります。
                        
1970年、サミュエル・ウェルズは"2つのとさかをもつトカゲ"を意味するディロフォサウルス(Dilophosaurus)を記載します。
米映画「ジュラシック・パーク」で描かれた襟巻
 
                        
                            1993年に公開された米映画「ジュラシック・パーク」に"スピッター(Spitter)"の名称で登場したディロフォサウルス。
                            
                            映画の中では毒を吐く恐竜として登場していますが、実際に毒をもっていた証拠はみつかっていません。威嚇のためのエリマキも描かれていましたが、おそらくエリマキも無かったでしょう。毒とエリマキは映画のなかのフィクション(根拠のない誇張)と考えるほうが良さそうです。
                        
ディロフォサウルスの切手・化石ギャラリー
 
                                 
                                 
                                 
                                 
                            